印象派を代表するフランスの画家、クロード・モネ(1840~1926年)の作品を集めた展覧会「モネ 連作の情景」が大阪中之島美術館(大阪市北区)で開かれている。代名詞的な「睡蓮」などの連作に焦点を当てた展示で、日本初公開品を含む約70点を鑑賞できる。5月6日(月・休)まで。
会場は、画業を時系列に分けた5章で構成。第1章「印象派以前のモネ」で、とりわけ目を引くのは、モネが妻と幼いわが子を描いた「昼食」(1868~69年)だ。日本初公開の大作で、食卓でスプーンを持つ子どもを眺める母、黒装束の女性が窓辺から2人を見つめている。モネと聞き思い浮かべる淡い色彩の風景画でなく、くっきりとした輪郭、黒を多用した人物画であることに意外性を覚える。当時のフランス画壇のサロン(官展)で落選した作品で、その後、モネは仲間とともに印象主義の時代を作っていった。同館の小川知子研究副主幹は「仮に『昼食』がサロンへ穏当に入選していたら、印象主義の展開は少し違っていたかもしれない」と指摘する。
第2章「印象派の画家、モネ」では、1870年代から80年代にかけて、セーヌ川流域を拠点に各地を訪れ描いた風景画を紹介。モネはパリの画塾で知り合ったマネやルノワール、ピサロらと連れだって戸外に出掛け、明るい外光の下、時にはアトリエで、目の前にある一瞬の光、移り変わる情景を描いた。その際、絵の具を混ぜずに明るい色をそのまま使い、躍動感のある筆遣いで仕上げたという。モネが川の風景画に取り組む時に使った小舟「アトリエ舟」を主題にした、2つの作品も展示。
第3章「テーマへの集中」以降は、同一のテーマで多作する、一般的なイメージの“モネらしさ“がみられる。ノルマンディー沿岸の同じ場所を何度も訪れ、季節や天候、時刻によって絶え間なく変化する風景を描き続けた。国内では初公開となる「エトルタのラ・マンヌポルト」(1886年)はその1つで、漁村エトルタにある奇岩を明るい色彩で描写。対して、同じ題材で手掛けた「ラ・マンヌポルト(エトルタ)」(1883年)は、岩穴の中で砕け散るダイナミックな波しぶきが表現されており、両作品の異なる趣が興味深い。
連作によって対象物が多様に変化する様子は、第4章でさらに展開。牧草地の干し草を描いた「積みわら」シリーズは、まばゆい昼の光、夕やけ、雪の上という状況ごとに、主題からさまざまな表情を引き出している。
第5章の最後の部屋は、作品周辺の壁面が自然を思わせる緑色。数点の「睡蓮」のほか、「芍薬」(1887年)「藤の習作」(1919~20年)などが並び、モネの愛した庭に紛れ込んだような心地になる。