Xにて「お風呂掃除中に『混ぜるな危険』で死にかけた」というポストが話題となりました。その内容は、洗剤を混ぜなければ良いのは認識していたものの「混ぜなければ良いか」とバスタブを泡掃除した後にクエン酸で窓を掃除、排水溝で2つが混ざったことで塩素ガスが発生してしまったというもの。投稿主は「そこから素敵な音楽と動物たちの楽しいひととき」だったと朦朧とする様子を表現していましたが、塩素ガスの発生は死亡事故にも繋がる危険性もあり「死にかけた」というのは決して大袈裟な表現ではありません。
漂白剤や洗剤には裏面に「混ぜるな危険」と書かれている表示があり、特に塩素系の洗剤と酸性系の洗剤は混ざることで有毒ガスを発生させてしまいます。多くの人が「混ぜて使うと危険である」という認識は持っているのかもしれませんが、気をつけないといけないのが想定外のケースです。
洗濯研究家の平島利恵さんによると、「排水溝内で2種類の洗剤が混ざってしまうケースはよく聞きます」とした上で、特に塩素系の洗剤は「レモンや酢、クエン酸と混ざっても有毒ガスは発するので、思わぬ事故が起きてしまうこともあります」とのこと。
よくあるのが、「カビ取りのために塩素系洗剤をふきかけていたことを忘れてしまい、別の洗剤で掃除を始めてしまった」「充分に塩素系洗剤が洗い流されていなかった」というケース。また、「暑い日にレモンをかじりながらカビ取り掃除をしていたところ、口の中で有毒ガスが発生してしまった」というケースもあったそう。
レモンをかじりながら掃除……というシチュエーションはなかなかないでしょうが、キッチンの排水溝にレモンやグレープフルーツ・梅干しなどが残ったまま塩素系洗剤を流してしまうなどはよくあるそうで、塩素系洗剤の使用の際には思わぬ事故があることを充分に考慮し作業をする必要があることがわかります。
日本家庭用洗剤工業会(家洗工)によると「特に近年はクエン酸の掃除効果が大きく取り上げられることで各メーカーから多くの酸性系の商品が販売されています」とのこと。今や「混ぜるな危険」という言葉がパロディーとしてお笑いのネタ的に消費されがちになっている現状を念頭に、「改めて本来の意味を知り注意する必要があるフェーズに来ている」としています。
「片栗粉と塩素系漂白剤を混ぜて使う」など、ネット上で拡散される“お掃除テクニック”にも、家洗工は懸念を示しています。「洗剤はメーカーが推奨する通り単体で使用することが望ましく、何かを混ぜて使用することで思わぬ事故を招く可能性もあります。家洗工としては一切、推奨できません」とし、「プロが正確な分量で安全にそうしたテクニックで混ぜられたところで、一般の方が完全に正確に真似できるわけではない。真似をするのもそうした行為の拡散も良くない」と警鐘を鳴らしています。
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GWは年末よりも大掃除に適した季節だそうですが、改めて「混ぜるな危険」は何をすれば危険なのかを認識して注意する必要がありそうです。
(取材・文:宮田智也)