「テニスボールは何色なのか?」
度々、ネット上で議論となる話題です。SNSにおいては直近でも「妻と議論になった」「白熱の討論となった」という投稿が数々見られるほど。主に論争となるのは黄色説・緑説・黄緑説。実際何色なのか、なぜその色なのか、住友ゴム工業テニスビジネス部商品企画グループ・阪本尚桂さんに話を聞きました。
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「ダンロップ」ブランドを持つ住友ゴム工業はテニスボールを作り始めて100年以上。数々の国際大会でも使用され、今夏に開催のパリ五輪のテニス競技でも採用されています。阪本さんは以前までテニスボールの技術開発も行ってきたそうです。
「結論から言うと、テニスボールは黄色」と阪本さんは断言。
「国際テニス連盟においてもテニスボールの色は『黄色』か『白』と定められており、弊社でもその基準に沿ったテニスボールを作り続けています」(阪本さん)
問題なのは「黄色にも幅がある」という点だそうで、阪本さん曰く「明確に『この黄色』という指定があるわけではなく、大会やコートに合わせて緑に近い色のボールが採用されることもあります。弊社の製品でも『発色の良い黄色』や『落ち着いた黄色』など数種類あります」とのこと。更に大会での採用に向けては「連盟の承認を得るためにボールの現物を送って見てもらうのですが、こちらが『このフェルトは蛍光みが強いかな』と思いながら申請することもある」と阪本さん。テニスボールの色論争の要因の一つに、この「黄色の幅」もあげられそうです。
ではなぜテニスボールは黄色なのでしょうか?
「現在、国際テニス連盟は『黄色か白』としていますが、1970年以前は白が採用されていました。黄色が使用されるようになったのはカラーテレビの普及がきっかけです。当時普及し始めたカラーテレビはまだ解像度が荒く、白いボールだと視聴者からは見えにくかったそうです。それからテレビでも見えやすい色として黄色が採用されるようになりました。そして、1972年には国際テニス連盟が黄色も指定しています」(阪本さん)
視認しやすい色は他にもありますが、黄色である理由は諸説あるとのこと。ただ明確に「赤は膨張色で大きく見える」「青色は小さく見える」などデメリットが。指定されている白があまり採用されない理由には「クレーコートで汚れが目立ってしまう」などもあるそうです。
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テニスボールの色は「黄色」と結論づけて間違いは無いものの微妙なニュアンスで明確化されない点もあり、今後も度々議論を巻き起こしそうです。
(取材・文:宮田智也)