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「No 違法動画!」 大手映画会社のホンキ YouTubeで、本編まるまる1本無料配信するワケ

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 映画の好みや楽しみ方は人それぞれ。このコラムでは、元映画館スタッフで映画企画屋の宮本裕也さんが、独自の視点から映画の“観かた”を紹介。今回は「映画本編の公式無料配信」について語った。

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 検索エンジンに「映画 本編」と入れると出てくる違法アップロード動画。近年、その違法性に対抗してか、映画会社が『公式』として映画をまるまる1本アップロードする状況が見られる。不特定多数が無料で視聴できるネット環境に、映画本編を“合法”でアップロードする理由を映画会社に聞くことができた。今回話を聞いたのは株式会社KADOKAWA(以下KA)の担当者。同社はYouTube公式チャンネル『角川シネマコレクション』(以下、角シネ)を持つ。

 最近のKAのYouTubeチャンネルはスゴイことになっている。関係者によると角川シネは2023年11月に開設され、最初に公開した『犬神家の一族(1976年版)』『リング』『ガメラ 大怪獣空中決戦』は、それぞれ100万回以上再生されるほどの大反響だったという。ネット環境さえ整えば動画を無料で視聴ができるのは今や当たり前の時代だが、映画をタダで観られるのはやはりスゴイ。10代の頃、レンタルビデオショップやテレビ放映の録画をVHSビデオにダビングして観ていた私にとって、角シネ最初のラインナップはなかなか衝撃だった。しかも配信作品は「公式」。KAにとって、本編アップロードには一体どういうメリットがあるのだろうか。

「旧作の魅力をより多くの方に知っていただくことが大きな目的です。そこを起点に、関連作のDVD・Blu-rayなどパッケージ商品の購買や、弊社の定額制配信サービスへの加入につながることを期待しています。さらにYouTubeに本編映像を登録することで、違法アップロード防止対策としても機能しています」と担当者は説明した。 確かに、YouTubeの検索窓に「映画、本編」と入力すると、明らかに違法とみられる本編動画が多く現れる。再生回数も多い。そんな中での公式としての配信。公式であれば視聴者は安心して視聴でき、権利者の元にも利益が還元されるだろう。

「映画 本編」にひと言足すことで、公式動画に行き付ける

 視聴者のコメントには「DVDは持っているけど、これでも観てしまう」「やっぱり名作」といった好意的な意見も。それらを目にしてKA関係者は喜んだそう。そして同社の狙い通り、公式配信をきっかけにDVD・Blu-rayなどパッケージ商品の購入者が増加。公式配信チャンネルの新規会員も増えることとなった。

 本編アップロードに際して興味深いのは、同社が扱う作品の種類だ。メジャーな映画会社ということもあり、ドラマから特撮まで幅広い。これら選定作品の豊富さや的を射た編成は、同社が複数映画会社の集合体であることにも起因する。

「角川映画・大映映画(2002年吸収合併)・ヘラルド映画(2006年吸収合併)の人気の高い作品から隠れた名作まで、幅広いジャンルから選定しています。一度きりではなく長期的にお楽しみいただけるよう、時期やタイミングも考慮して組むよう工夫しています」(担当者)

 6月14日には、黒沢清監督のセルフリメイク版『蛇の道』が劇場公開された。それを記念して、黒沢監督の『蛇の道』(1998年)、『回路』がYouTube にアップロードされた。(『蛇の道』は配信終了。『回路』は6月21日19時59分までの限定配信)。さらに市川雷蔵が国際スパイ役で主演した『陸軍中野学校』(6月21日20時配信〜期間限定)、経済小説の第一人者、高杉良原作、主演に役所広司が務めた“日本再生映画”『金融腐蝕列島 呪縛』(7月5日20時配信〜期間限定)など話題作が続く。

映画『回路』コピーライト:©2001KADOKAWA 日本テレビ 博報堂 IMAGICA
映画『陸軍中野学校』コピーライト:©KADOKAWA 1966
『金融腐蝕列島 呪縛』コピーライト:©1999「金融腐蝕列島 呪縛」製作委員会

 いずれも期間限定だが、今後も視聴者は増えるだろう。映画館本編だけでなく、黒沢監督と当時の宣伝担当の小林剛 氏(KA)とのスペシャルトーク映像も加えられ、劇場映画をより楽しめる工夫がチャンネル内には見られる。

 私たち視聴者は、アップロード映像をクリック一つで手軽に見ることができる。しかし映画はご存知の通り“権利の塊”のようなもの。色々な分野の人が集まって、時間をかけて作られたのが映画だ。動画をたった1本、ネットに公式にアップロードするだけでもさまざまな部署の確認を取る必要がある。片や、権利元に確認を取らず著作権を蹂躙する違法アップロードは、映像さえあればあとはシステム上で作業するだけだ。制作関係者を敬いその権利を守りながら、より多くの人に気軽に楽しんでもらうためにと何人もの関係者や関係部署に「確認を取る」。これだけでもかなりの労力がかかることを知ってもらいたい。

 違法動画を観るのはナンセンス。今、改めて言う。No 違法動画! Yes 公式動画!

(6月18日掲載時の情報です。公式動画は期間限定配信となります)

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