「とにかく水摂取」「コーヒーは脱水症状招く」←猛暑対策の“ウソ”散見 正しい知識を専門家に聞いた | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「とにかく水摂取」「コーヒーは脱水症状招く」←猛暑対策の“ウソ”散見 正しい知識を専門家に聞いた

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 7月も半ばとなり、全国各地で気温35度以上の猛暑日も続出。危険な暑さが続いています。数十年前の夏とは明らかに違う“災害級の暑さ”に対し、我々もかつての常識から知識をアップデートさせ「今現在の正しい知識」を身につける必要があります。とはいえ知識として何が正しくて何が間違っているのか、即座に判別できる人は多くないかもしれません。

 そこで今回は「もはや、今までどおりの生活では死ぬ(かも)」という文言の帯が特徴的な『猛暑対策BOOK』を先日出版した筑波大学体育系准教授の藤井直人先生に“猛暑対策のウソ・ホント”について聞きました。

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 猛暑対策や熱中症対策などでよく言われている常識や定説には、最近の研究によりウソだとわかってきたようなものも多くあるそうです。

【カフェインを飲むと脱水症状が起こりやすい】→ウソ

「カフェイン=利尿作用=脱水が進む」というイメージがあり、暑さ対策のためにコーヒーを飲むことを避ける人もいるそうですが、これはウソとのこと。「数多くの研究成果によって、カフェインの利尿作用のせいで脱水が著しく進行することは無いと結論づけられています。わざわざコーヒーを我慢するといった必要は無いです」(藤井先生)

カフェインの利尿作用では脱水症状までは至らない

【とにかく水をたくさんとると良い】→ウソ

 塩分をほとんど含まない水やお茶を大量に飲むと、場合によっては血液中のナトリウム濃度が非常に低い状態の「低ナトリウム血症」を発症し、軽度の場合には疲労感、重度の場合には昏睡や痙攣など危険な状態になることもあり得るそうです。「水分は発汗などで失う分だけ適切な量をとるのが理想です。もしトイレに何度も行くような傾向があれば、それは過剰飲水のサインです」(藤井先生)

水分のとり過ぎは逆に体に不調をきたす可能性も

【手のひらを冷やすのは体温を下げるのに効果的】→微妙

 数年前から暑さ対策として手のひらを冷やすグッズが販売されています。手のひらには血管が多数存在することから冷却効果が高いとされてきましたが、藤井先生によるとその効果は「微妙」とのこと。

「ほかの部位を冷やすより冷却効率は良いかもしれません。しかし、手のひらの面積はごくわずかなので、冷却効率はそこまで高くはありません」(藤井先生)

 基本、冷やす面積が大きいほど冷却効果は高く、腹や背中は面積が広い部位でもあるのでアイスベストを着用すればそれなりの冷却効果は見込めると藤井准教授は言います。特に熱中症が疑われる緊急の場合には、短時間で深部体温を下げる必要があり、首や脇・手のひらなど一部分ではなく氷風呂など冷水で体の大部分を冷やすのが適切なのだとか。

部分的に冷やすより広い面積を冷やす方が効果的

【熱いものを食べると夏バテ対策になる】→ウソ

「真夏の暑い日に熱いものを食べて汗をかくことで夏バテしない」という話は聞いたことないでしょうか?

「運動や入浴などで発汗を繰り返すことで熱放射の機能が向上して、体が暑さに適応する『暑熱順化』を起こすことができますが、熱いものを食べて出る汗は一時的なもの。暑熱順化を起こすには足りず、夏バテ対策になるとは言えません」(藤井先生)

 暑熱順化は「暑熱下でのウォーキング30分程度を目安に、慣れてきたらジョギングにして強度を上げ運動時間を延ばす」または「風呂やサウナで30分を目安に徐々に時間を延ばす」というのが基本的な方法とのこと。ですが、どちらも無理は禁物。苦しいと思ったら運動をやめたり、風呂から一時的に上がったりすることも重要とのことです。

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「夏の気温35℃以上」はもはや当たり前の時代。正しい知識を知り、自分の身は自分で守る必要がありそうです。

(取材・文=宮田智也)

■『猛暑対策BOOK』(藤井直人著/小学館)
1430円(税込み)

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