文字を書く際に使用するアイテムは様々ありますが、小学生の頃はたいがい鉛筆を使っていた人が大多数ではないでしょうか。神戸電子専門学校(神戸市中央区)の学生が様々な出身地の学生100人を対象に校内アンケートを実施した結果、「小学生の時は鉛筆を使用していた」と答えた人がほとんどを占め「中学生になってからシャーペン(シャープペンシル ※1)に切り替えた、利用し始めた」と答えた人が9割という結果になったそうです。
そもそも小学校ではシャーペンの使用が禁止されている場合が多く、必然的に鉛筆を利用していたという人が多いそうです。なぜ小学校では生徒に鉛筆を使わせるのでしょうか? ラジオ番組『Clip』(ラジオ関西)内、同専門学校の学生が独自のレポートを発表するコーナー「走れ! Clip特派員!」で調査しました。
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明石市の教育委員会に問い合わせたところ「子どもは筆圧のコントロールするのが難しいため」という回答が。削らずとも常に芯を出せ細く書けるシャープペンシルですが、強い力で書くと芯が折れてしまうというデメリットもあります。そのため初等教育である小学校では鉛筆を推薦しているといいます。また「シャープペンシルの芯が詰まった時授業に集中できない」「鉛筆のほうが比較的価格も安い」という理由もあるそうです。
先のアンケート結果でも明らかになった通り、中学生になると多くの学生が筆記具をシャープペンシルに切り替えています。さらに大人になるにつれボールペンの使用頻度が高くなり、ますます鉛筆から遠ざかっていく傾向にあるように思えますが、これについて文具メーカーに問い合わせてみたところ「そもそも鉛筆とシャープペンシルを対峙させておらず、どちらも“書く”という点では同じなのでこだわっていない」とのこと。
それぞれの出荷量(概数)を見ると鉛筆は2億本、シャープペンシルは1.1億本(2023年)というデータが。なんと鉛筆の方が売れているという事実が判明しました。鉛筆の需要が高い理由としては、(1)初等教育では濃くなめらかに書ける2B~4Bの鉛筆をおもに利用(2)中学・高校でシャープペンシルに切り替えるものの、大学受験のマークシート試験に備えるためHB鉛筆にいったん戻る(3)社会人になっても資格・検定はマークシートであることが多く、鉛筆に頼る人が大多数(4)役所や法曹関係・銀行等の窓口では「署名・捺印」等の指示を鉛筆で行っている(5)芸術分野におけるドローイングツール(6)各地方自治体が国政・地方選挙や災害時の筆記具として鉛筆を備蓄しているため……などがあります。
文具メーカーは「鉛筆でもシャープペンシルでも『使いやすい』と感じるツールを使うことで、“書く”ことに意欲的であり続けることを歓迎すべき」と語ります。むしろ「書かない/書かせない」という学習環境が整いつつあること、つまり「GIGAスクール構想」に危機を感じていると言います。近年タブレットで授業を行う学校が増えており、授業は「聞くこと」に集中し黒板に書かれていることはスマホで撮影、画像を読み取り文字起こしするアプリを使用するためノートに書くということをしない学生もいるのだとか。
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アンケートの結果で「シャーペン優勢」と予測していた神戸電子専門学校の学生たち。鉛筆の需要の高さに驚くとともに、「書く」ことが少なくなってきていることで、改めて「書く」ことの大切さを感じたと話しました。
※1 「シャープペンシル」は、シャープ株式会社の登録商標「エバー・レディー・シャープ・ペンシル」が略され、国内の金属製の繰出鉛筆の代名詞として一般に使われるようになった呼称です。
※ラジオ関西『Clip月曜日』より