日本の結婚式の伝統スタイルといえば、新郎新婦が和装に身を包み神の前で誓う「神前式」です。人生においてひとつの区切りともいえる「結婚式」は、国によってそのスタイルや衣装はさまざま。まるで映画やドラマのような結婚式がおこなわれる国もあります。その国とは、希少な動物や植物が生息する国として知られるマダガスカルです。
マダガスカルでの結婚式に参加した経験があり、大阪市北区で「旅cafe黄色い家」を営む鴨下裕充さんに、リアルな事情を教えてもらいました。
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鴨下さんによると、同国での結婚は入籍の段階から日本と異なるそうです。
「私が滞在していた村はとても小さい村で、結婚届を出せる役所がありませんでした。なので、少し離れた大きな町まで足を運ばないと届け出が出せません。さらに、届け出を受理できる日が定められているため、その日に合わせ一斉に結婚したい人たちが集まるんです」(鴨下さん)
マダガスカルでは、届け出を出す際に新郎新婦の親族も同行することがほとんど。そのため届け出が出せる時期になると、町の役所に大勢の人々がズラリと並ぶのがもはや風物詩なのだとか。ハレの日ということで親戚ともどもおめかし。その光景はかなり鮮やかだそう。鴨下さんは「あんなにたくさんの新郎新婦を見る機会はなかなか無いですね」と振り返ります。
無事に届が出せたら村に戻り挙式や披露宴がおこなわれます。それも日本とは少々趣が異なり「ストーリー仕立て」なのだとか。鴨下さんが参加した結婚式では「新郎が新婦を探す」という導入から式が始まりました。
「まず新郎が先頭に立ち、後ろに自分の親族を引き連れ入口から入ってきます。『僕の愛しのお嫁さんはどこだ。姿を見せてくれ!』というようなドラマティックなセリフを交えつつ、村のどこかに隠れている新婦を探し出す……というストーリーでした」(鴨下さん)
「新婦を探す」というストーリーに沿って実際に村じゅうを巡る新郎(結婚の挨拶も兼ねている)、最後に実家のクローゼットに隠れていた新婦を見つけ出し、劇は無事に終幕。そののち立会人のもと結婚の契りを交わしますが、そのやり取りもドラマティック。
「日本では指輪交換のタイミングで、牧師にあたる人物が新郎新婦に『造花の花束』を渡します。花はすべてつぼみのように閉じられており、2人で一緒に、つぼみを1つずつ解いていきます。どれかに結婚指輪が隠されているので、見つけ出した頃には花は満開の状態に。そして2人が愛を誓いあい、式は終了します」(鴨下さん)
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マダガスカルでは日本のように結婚式場やウェディング会社がないため、基本的に新郎新婦やその近しい人たちで式を作っていくことになります。式を企画する段階から2人の「共同作業」が始まっているともいえるため、絆もより深まるようです。
(取材・文=つちだ四郎)
◆旅cafe黄色い家
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