元フジテレビアナウンサーで、現在はフリーで活躍している田中大貴さんが、野球実況で自身が大事にしていることについて、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組で明かしました。
ラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』8月26日放送回では、「セクシーすぎるウグイス嬢」、フリーアナウンサーの藤生恭子さんがゲスト出演。野球のアナウンスについてのトークで盛り上がり、かつてオリックスのウグイス嬢だった藤生さんが、吐息まじりの美声で「4番、ファースト、T-岡田!」と生アナウンスを披露するひとコマもオンエアされていました。
そのトーク中、フジテレビ時代から現在に至るまで、数多くの野球実況を担当してきた田中さんが、若手の実況アナウンサーに対して、藤生さんのような場内アナウンスをもっと大事にしてほしいと、自らの経験を交えながら伝える様子がありました。
「野球中継のなかで、若い実況アナウンサーにも大事にしてもらいたいこと。それは、会場のノイズ、歓声、選手の声、打球音も大事ですが、場内アナウンスがなにより大事だということ。
僕は大事な場面で(注目される)選手がバッターボックスに入るとなったとき、たとえば藤生さんの『4番、ファースト、T-岡田!』というアナウンスのところでは、実況を入れません。また、試合前にピッチャーが登場するときも、ピッチャーのコールがあるときは(実況を)言わない。さらに、誕生日の選手がバッターボックスに入るとき、バースデーソングが終わるまでは実況をしない。これは決めています。
会場のアナウンスメントも演出のひとつ。見せる、聞かせるというのも大事。(実況は)どうしてもしゃべりたくなるもので、そこはそれぞれのさじ加減だと思いますが、(場面によっては)僕は黙るということを選択しています。
胴上げのときは絶対に実況をつけませんし、皆さんに見てもらっています。たとえば、『ヤクルトの真中監督が帽子をとりました! あのときの野村克也さんと同じです!』と(胴上げ直前)までは言うが、胴上げのときは黙ります。『1回! 2回!』とか皆さんが言うものですが、ファンの皆さんが見て感じてもらう瞬間でもあるので、(あえて)しゃべらないです」(以上、田中さん)
また、ヒーローインタビューについてもこだわりがあるという、田中さん。「どうしても自分が(思っていることを)聞きたくなるものですが、自分が聞いているんじゃなくて、そこで聞いているのはファンであり、視聴者。選手が何を言いたいか、ファンの皆さんが何を聞きたいかや知りたいかが大事」と、インタビュアーはあくまでファンの代弁者であることを強調。そのうえで、「最後1個だけ、自分の質問を用意しておく」とコメント。
この真意については、「ファンが知らない、自分だけが取材してきたことを(選手に)ぶつければ、選手は『観てくれている!』と心を開いてくれる。心を開いてくれたら、今まで言ってきていないことを言ってくれる。そうするとファンも喜ぶ。選手の皆さんは(思いを)『言えた!』となるし、チームも『そんなことを思ってたんや』と感じて、それがチームの結束につながる。そう持っていくのが大事」と、選手を引き立てつつ、チーム、ファンの一体感を生み出すことの重要性も、インタビュアーに求めていました。
田中さんは、2009年の日本シリーズで優勝した巨人の原辰徳監督への優勝インタビューを担当した時の原監督との秘話も明かしながら、「一番大事なのは、(選手や監督らと)関係性をつくっておくために(現場に)通い続けること。それが、インタビューや実況のスキル(技術)を上げることにつながる」と、試合や練習などの現場に足しげく通い、選手・スタッフらを取材したり交流したりする大切さを説いていました。
この話に、藤生さんは「あと3時間くらい、このレッスン受けたい!」と述べ、番組でともにパーソナリティーを務める林歳彦さんは、「大貴がええこと言うから、ここはカット! カット!(笑)」とにこやかに語っていました。