10月。日の入りも早くなり、季節は進んでいることを感じさせられる。今月の最大の注目は、紫金山・アトラス彗星。観察のチャンスを迎える。
夜空にぼんやりと輝き、地球に近づくとほうきのような長い尾を引く彗星は、その姿から「ほうき星」とも呼ばれる。紫金山・アトラス彗星は、2023年1月に発見された。国立天文台のHPによると、発見当初は「とても明るい彗星になる」と期待され、その後、当初の期待ほど明るくはならないという予想に転じていた。しかし最新の観測ではかなり期待できる明るさになりそうだ。
紫金山・アトラス彗星は、9月27日(日本時間28日)に、太陽に最も近づいた(近日点を通過)。この頃から南半球では長い尾を引く姿が撮影されるようになった。10月8日から11日にかけて宇宙から太陽を観測するSOHO(太陽観測衛星)も、尾を引いている見事な姿をとらえている。12日(日本時間13日)に、地球からの距離が7100万キロメートルとなり地球に最も近づく。この頃から夕方の西の低い空で見られるようになる。その位置は日によって変わり、13日、14日は金星と同じ高度に見える。16日以降になると高度はやや上がり、見やすい状態になる。肉眼でも見える明るさが期待できる。月末にかけ、徐々に高度を上げていき、21日には30度となるが、明るさは徐々に失われていく。明石市立天文科学館の井上毅館長は「双眼鏡を使うといいですよ」と話す。同館では、19日にハワイから彗星の中継を行うオンラインイベントを開催する予定。
10月の満月は17日。2024年で地球に「最も近い」満月となる。地球の周りを公転する月の軌道は楕円形のため、地球と月との距離は一定ではない。さらに月の軌道は太陽や地球などの重力を受けて変化している。このため地球と月のそれぞれの中心を結ぶ地心距離も変化する。
10月17日の満月の地心距離は約35万7400キロメートル。2024年で最も地球から遠い満月は2月24日で、地心距離は約40万6000キロメートルだった。この2つの月を並べることは不可能だが、「最も近い満月」の見た目の大きさは、「最も遠い満月」より約14%大きくなるという。とはいえその大きさの違いを感じるのは難しそうだ。ちなみに1か月前の9月17日は中秋の名月だったが、満月となったのは翌18日だった。この時の地心距離は約35万7500キロメートルだったので、今回の「地球に最も近い満月」の見かけの大きさはほとんど変わらないという。
この他、10月は月と惑星との競演も楽しめそう。上旬は、宵の明星・金星が西南西の低空で輝く。マイナス4等級の明るさなので、低い空でも見つけやすい。6日に細い月と並んだ金星は、この頃から徐々に高度を上げていくため、存在感を増していくだろう。14日になると、月の近くには土星が見える。月は上弦と満月の中間あたりでかなり明るいが、0等台の土星はすぐに見つけることができる。ただ、この2つの星がかなり明るいため、周囲の星は見つけにくいかもしれない。
21日には月の近くに木星が見える。下旬になると、木星は日の入りから3時間ほど経つと東の空から昇ってくる。真夜中には冬の星座の1等星を結んで描く「冬のダイヤモンド」が木星を取り囲むように昇ってくるため「豪華な眺め」となりそう。月は日ごとに東へ移動し、23日には火星が近くに見える。
月と木星が近づく21日ごろには、オリオン座流星群が極大を迎える。とは言え、月明かりがあり、1時間に見られるのは5個程度と予想されている。
話題の多い10月になりそうだ。
(参考:国立天文台HP 協力:明石市立天文科学館 井上毅館長)