毎年誰もが迎える「誕生日」といえば、家族や友人で集まってごちそうを食べたりプレゼントを贈ったり……盛大に祝うといったイメージが強いのではないでしょうか。日本では「誕生日サービス」「バースデー特典」を実施している企業も多く“特別な日”という認識が定着しているようです。
しかしながら、地中海をのぞむ「ギリシャ共和国」では誕生日よりも大切な日があるとの情報が。ギリシャで育ち、現在は同国の食品やワインなどを販売する「ノスティミア」の専務であるフラギス・アサナシオスさんに話を聞きました。
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ギリシャにおける誕生日よりも重要な日、それは「ネームデー」。国民の約90%がギリシャ正教を信仰しているという同国ならではの特別な考え方といいます。この日には一体どういった意味があるのでしょうか?
「ネームデーとは、ギリシャ正教の聖人たちを『記念』する日です。ギリシャ人のほとんどは生まれてすぐに洗礼を受け、国民の多くがマリアやヨルゴスなどといった聖人の名前を授けられます。自分と同じ名の聖人を称える日がネームデーとなり、そのため毎日が誰かのネームデーとなります」(フラギスさん)
ネームデーにおける「記念」とは、いわゆる誕生日や記念日を祝う「celebrate」という意味ではありません。歴史的な出来事や偉大な人物の業績を称え、その記憶を残すためにおこなう「commemorate」を指しているとフラギスさんは言います。
「私が幼少期を過ごした1950年代当時は、ネームデーを迎えると家を一日中開放して色々な人がお祝いとしてプレゼントをもって訪れました。現代ではネームデーを迎えた人が学校や職場にケーキやお菓子を持っていき、クラスメートや同僚に配るのが主流。家族や親友など近しい間柄であれば、ネームデーの人がプレゼントを受け取ります」(フラギスさん)
フラギスさんによると、1950年代は今のように誕生日を祝う文化がなかったとのこと。今でこそ誕生日も祝うようになりましたが、それでもネームデーは「誕生日よりも重要」と捉えている人が多いのだとか。ギリシャ人にとってギリシャ正教の聖人を称えることはかなりの重要事項であるとうかがえます。
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ギリシャ人なら誰もが持っているといっても過言ではないネームデー。聖母マリアが天に昇ったとされる「聖母被昇天(8月15日)」や聖ゲオルギオスが殉職した「ゲオルギオスの日(4月23日)」といった聖人にまつわる日も制定されているので、自分のネームデーが国をあげての祝日にあたるケースも珍しくありません。ちなみに、サンタクロースのモデルとも噂される聖人・聖ニコラオスはキリスト教圏でもかなり知名度の高い人物です。そのため、ギリシャでは「ニコラオス」の名前を持つ男性が多いそうですよ。
(取材・文=つちだ四郎)
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