兵庫県知事選挙で再選した斎藤元彦氏の選挙戦をめぐり、PR会社(兵庫県西宮市)の経営者の女性が、「斎藤氏の陣営から広報戦略を任された」とするインターネット記事を公開し、公職選挙法違反の疑いが指摘されている件で、東京地検特捜部元検事・郷原信郎弁護士と神戸学院大学・上脇博之教授が、斎藤氏と女性に対する公選法違反(買収、被買収)容疑の告発状を12月1日付で兵庫県警と神戸地検・特別刑事部に送付した。
郷原、上脇両氏が2日、オンライン会見で明らかにした。
告発状によると、PR会社が斎藤氏から戦略的広報業務を受託し、ネットによる選挙運動を含む広報全般の企画・立案を実行したとされる。そして、斎藤氏が71万5000円(税込み)を選挙運動の報酬として支払い、選挙運動員に金銭を供与したとしている。
郷原弁護士は「この支払いが、公選法違反の買収容疑に当たる」とした。
さらに、「SNS戦略を業務としているPR会社が、9月に(斎藤氏が知事職を)失職した直後に業務の提案をしたことを認めている。女性がこの提案をひるがえし、ボランティアでやったという弁解は成り立たない」と指摘した。
このほか、プロフィール写真の撮影をボランティアで行った、としていることについても、「急きょカメラマンやヘアメイクなどを手配し、明らかに費用が発生している。この費用を誰が負担したのか」と疑問を呈した。
斎藤氏はこれまで、PR会社に支払った71万5000円は公選法で認められたポスターの制作費だったとの答弁を繰り返している。
代理人弁護士も会見で、「SNS戦略や広報全般を任せた事実はない」と述べ、女性が「事実関係を『盛っている』」として、公選法違反に抵触する運動員買収を否定した。
郷原弁護士は「これら斎藤氏側の弁解自体が、“針の穴に糸を通すような”ものであり、難しい。こうした弁解が成り立たないことを判断する根拠が十分にある」と、主張の脆弱さを強調した。
告発状は2日中にも兵庫県警と神戸地検に届く見込み。