クマ襲来による被害から再起するために、兵庫県宍粟市の養蜂園が、今月1日からクラウドファンディングを立ち上げています。そのいきさつなどを、同園の代表に聞きました。
たなか養蜂園(宍粟市一宮町)の代表、田中啓介さんが養蜂を始めたのは、約10年前。美しい景観と、自然の豊かさから、宍粟市がミツバチの飼育に適していると感じ、2つの巣箱から徐々に規模を拡大。「Shinobee Honey」ブランドとして、ミツバチの育成、はちみつの生産や販売などを行っています。
そんな中で、以前から、同園の周辺では、クマの目撃情報が多発していたそう。「猟師さんからも、『今年は天候などの関係でどんぐりが不作状態になっているため、山から下りてきて農作物を荒らす被害が増加している』という話を聞いていました」と田中さんはいいます。
転機が訪れたのは、今年の9月11日。養蜂園の見回りをしている際に、田中さんは、クマによって荒らされている巣箱を発見しました。春から翌年度にかけて、はちみつ搾りができるように育成してきた数十群のミツバチが全滅したり、電気柵が押し倒されたりするなど、甚大な被害を受けてしまいます。
当時の心境について、田中さんは「クマの被害を受けたのは初めてだったということもあり、ショックで5日間ほどは何も手を付けられませんでした。事業をやめようかと思うこともありました」と振り返ります。
それでも、再び立ち上がることができた理由は、周りからの“声”でした。
「顧客の方からの『来年もはちみつを食べたい』という言葉や、友人・生産者仲間からの激励に押し上げてもらうような形で、前を向くことができました」(田中さん)
クラファンを開始するため、9月末にページを立ち上げ、2か月をかけて入念に準備を行い、12月1日から支援者の募集がスタートしています。
返礼品の中には、新たに導入する巣箱に企業・個人名を刻印できるコースの他に、2025年度や被害前に採取したはちみつを受け取ることができるコースなどがあります。
12月10日昼時点で、目標金額を上回る330万円以上が集まっており、支援者も130人を超えています。同園のはちみつのファンだけでなく、他業態で同じ“生産者”として活動している人も参加しているそうです。
「今回のプロジェクトがきっかけで、たなか養蜂園のことを知ってくださった方々の期待に応えていきたい」という、田中さん。「ミツバチは自然環境の中において必要不可欠。森林・田畑・農園を守っていくためにも、はちみつを通じて自然環境に興味を持ってもらいたい」と、養蜂を守り続けるべく、前を向いていました。
なお、このクラファンは来年1月10日まで継続。詳細は、クラファンサイト「CAMPFIRE」内、「Shinobee Honey」のプロジェクトに掲載されています。
(取材・文=長塚花佳)
※ラジオ関西『Clip』水曜日 「トコトン兵庫」より
(2024年12月11日放送回)