宝塚市出身で、ラグビーワールドカップ2019では日本代表のベスト8入りに貢献した、徳永祥尭(よしたか)選手が、18日、宝塚市役所を訪れ、中川智子市長を表敬訪問した。徳永選手は、「今回のW杯では、個人的な結果があまり出なかった」と本大会で試合出場機会がなかったことへの悔しさをにじませつつ、「試合に出るより、ある意味、特別な経験をさせていただいた」とコメント。「燃え尽きることなく次の目標に向かっていける」と前を向いていた。主なやりとりは次の通り。
――W杯は、どのような経験になったか。
31人しか選ばれていないなか、試合に出るより、ある意味、特別な経験をさせていただきました。今まで、例えばトップリーグなどでは、スタート(先発)で出て、ラグビーをプレーすることでしか、“ラグビーの良さ”を感じられていませんでしたが、支える側、サポートする役割に初めてまわって、「試合に出ていない人たちがいるから頑張れるんだ」と気がつきました。トップリーグに戻って、もし自分が試合に出られるならば、出られない人の分まで頑張り、心のケアなどもしていきたいと思っています。
――いろいろなポジションがあって「ONE TEAM」ということか。
過去にW杯を経験している選手のふるまいを見ていたら、「出られない人の分までやってやろう」という気持ちと、出られない人に対する気遣いや心遣いが目で見て取れました。そうしないといけないし、そうすることで、自分のラグビー選手としてのキャリアもより大きなものになっていくと思います。プレーヤーとしてではなく、人間として成長できた大会でした。
――水の補給の時にはどういった話を。
基本的には上(監督)からの指示を伝えるだけです。監督の描いている”やりたいこと”と差が出てしまうため、個人の意見は言わないようにしました。具体的には、トライを決められた後なら、どこを修正しなければいけないかを伝えます。あとは、どこにプレッシャーをかけてきているか、どこのスペースが空いているかなど、次のプレーの選択肢の幅を広げたり、トライの可能性を上げたりするのが役割です。
――伝え方を工夫したか。
水を補給できる時間はすごく短いんですよね。実は1回、情報量が多すぎるのに伝えようとして、コートから水を持って出るのが遅れたことがありました。その結果、キックオフでそこを狙われて、あわや失点。その時はめっちゃ怒られました(笑)。次からはより簡潔に、簡単な言葉で伝えるようにしましたね。
――国民がぐっとラグビーに近づいた。
(出身である「宝塚ラグビースクール」の)体験会に、普段なら3~4人のところ、50人くらい来ていると聞きました。東京の自宅の近くでも、野球ボール、サッカーボールではなく、ラグビーボールで遊んでいる子を見ます。自分たちのやってきた「ラグビーを有名にする」「若い子たちを育てる」ということが、間違っていなかったんだなと思いますし、本当にラグビーをやっていてよかったなと思います。
――宝塚の想い出は。
週1回の(ラグビースクールの)練習の他には、武庫川の河川敷でラグビーをして、川で遊んで帰るという毎日でした。専門的な話になりますが、足の裏の感覚は、バランス感覚や運動神経にすごく関係してきます。小学生のころ、よく裸足で遊んでいたのが、上手く作用したのかもしれませんね。
――徳永選手にとって、ラグビーの魅力について。
ラグビーは本当に格闘技みたいなもので、ボールを持ちながら相手にぶつかるという、普段、人間がすることとは逆のことをしています。キックを蹴ったり、パスをしたり、当たりにいったり、抜けを狙ったり……。ボールを持っている選手には本当にいろいろな選択肢があり、そのあたりが魅力だと思います。
――頭が目まぐるしく動いている。
特に、9番から15番の“バックス”と呼ばれるポジションの選手には、賢い人が多い。最近も子どもたちに「頭がよくないとできないですか」と質問されました。日本代表は、毎週サインプレーが変わります。だから、「バカはできないよ、勉強しないといけないよ」と答えました(笑)。
――宝塚の子どもたちへ向けて。
本当の願いは、ラグビーをもっと知ってほしくて、小さな子供たちにラグビーをしてほしいです。そしてまた、その子たちが日本代表になって、一緒にプレーできるように、長く現役を続けられるように頑張りたいと思います。
――今後の目標は。
今回のW杯では、個人的な結果があまり出なかったので、燃え尽きることなく次の目標に向かっていけます。これは、ある意味良かったのかな。また4年後、「よく頑張った」と言っていただけるように、今回の(試合に出られなかった)悔しさをもって、今後に向けて頑張りたいと思います。