最近では、もはや「当たり前」となった企業のSNS活用。自社商品の宣伝だけでなく企業同士の交流も行われるなど幅広い用途で利用されているようです。そんな中、SNSへの投稿動画がきっかけで「人材確保」に繋がった事例を筆者はキャッチしました。
“会社の偉い人”がダンスやクイズに挑戦する動画を投稿したことで、新入社員の内定が決まったのが「三陽工業株式会社」。詳しい話を代表取締役の井上直之さん・広報課課長の加賀史穂理さんに聞きました。
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1980年に創業し兵庫県明石市に本社を構える同社。全国12カ所の自社工場でKawasakiのオートバイ部品の研磨などを行う製造業と、「製造派遣業界の常識を覆す、三陽工業ならではの働き方」を追求する製造派遣事業を展開しています。
現在2000名以上の社員を抱える同社は、「製造派遣業や中小製造業で真面目に一生懸命働く人が報われる世界を創ること」をテーマに、社員総数8万人を目指しているのだそう。広報のSNSにはかなり力を入れており、YouTubeの登録者数は約1.4万人、TikTokのフォロワーは約6.5万人にも上ります。
TikTokを始めたきっかけについて、加賀さんは「2021年3月にアカウントを作成し運用を開始しました。それまでInstagramやTwitterは活用していたのですが、TikTokだけ運用していませんでした。そんな折、当時の取締役であった小杉が広報室に勢いよく入ってきて『僕、TikTokやってみたいんだけど!』と。それがきっかけですね。話はトントンと進み、提案者である小杉を含む『おじさんTikTok』が誕生しました」と話します。反響は大きく、新卒採用・中途採用に大きな成果をもたらしました。
「2022年卒の新卒社員の中には、TikTokのコメント経由でエントリーして選考に参加した者も。その後、内定となり現在は営業として一緒に働いている社員がいます。現在約6.5万人のフォロワーがいますが、フォロワーが増えるにつれて会社認知につながっています」と井上さん。ちなみに、おじさんTikTokの主な出演者は提案者で取締役の小杉さん(60歳)と顧問の森本さん(75歳)。森本さんはキャラクターのよさと、本社の中で一番年上だったことから選出されたとのこと。
「小杉さんと森本さんはすでに定年退職されているんですが、1年分くらい撮りためています。しばらくは2人が登場する動画での配信ができそうです」(加賀さん)
最近では、代表取締役である井上さんによる『社長ラジオ』も始めた三陽工業株式会社。こうした自由な社風となった背景には、製造業に対する熱い思いがありました。
「弊社では『日本の製造現場を元気にする』というビジョンをかかげています。そのために、社内で合言葉のように使用されているのが『やったことがないことをやってみよう』というフレーズです。TikTokをはじめとするSNS運用も『やったことがないことをやってみた事例』の一つです。トップダウンではなくボトムアップを大切しているからこそ、社員一人一人が当事者意識を持ち『やったことがないこと』を提案し、挑戦できる環境が整っています」(井上さん)
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製造現場を元気にするため、新しいことに挑戦し続ける同社。「誰にも予想できない次の一手」は、何を見せてくれるのでしょうか?
(取材・文=迫田ヒロミ)
※ラジオ関西『Clip』2025年1月15日放送回より