千利休考案の『雪駄』←令和に進化を遂げる ジーンズにも合う“ハイブリッド版”や“室内履き”も | ラジトピ ラジオ関西トピックス

千利休考案の『雪駄』←令和に進化を遂げる ジーンズにも合う“ハイブリッド版”や“室内履き”も

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 その昔、日本人の多くが愛用していた「雪駄(せった)」。起源は諸説あるが、茶人・千利休によって考案されたといわれており、当時、男性の礼装時の履物は雪駄だった。西洋文化の流行により雪駄を履く人は減少しているが、現代人にマッチする“進化系の雪駄”を生み出している会社が奈良県にある。

 その会社の名前は、株式会社サカガワ(奈良県北葛城郡)。創業の地である奈良県・王寺町は、かつて、日本の花緒の6割が取り引きされたまちとして知られる。

 1957年に創業して以来、雪駄をはじめとした履物を扱ってきたが、2008年にオリジナル雪駄ブランド「大和工房-YAMATOKOBO」をスタートさせた。これは、3代目社長・阪川隆信さんの「雪駄の伝統を未来に残そう」という思いがはじまりだった。

 現代人のニーズに合う雪駄を作ろうと奔走した結果、着物などの和装ではなく普段着にも合わせられる雪駄を開発。素材には、奈良の大和茶染め・墨染めのほか、岡山デニムや徳島の阿波しじら織、新潟の小千谷縮を使用するなど、全国の地場産品を取り入れている。

 動きやすさを重視した機能性の高いソールを加えた雪駄「大和工房 cross」は、“ハイブリッドスニーカー雪駄”と銘打っている。

 ジョン・レノンはスーツに雪駄を合わせて履いていたそうだが、阪川さんは「この雪駄もジーンズに合わせるなどしてかっこよく履いてほしい」と話す。

普段着にも合わせやすい雪駄「大和工房 cross」
普段着にも合わせやすい雪駄「大和工房 cross」

 伝統的なスタイルの雪駄には左右がなく、花緒は中央にある。そのため、小指がはみ出たり、内股気味になってしまったりすることから敬遠されがちだった。

 これを解消するべく、阪川さんは花緒の位置を親指側にずらして履きやすく改良。さらに、花緒に当たる部分の指の皮は薄く傷めがちであるため、花緒にはやわらかい素材を使用している。

 5Lサイズまで展開しているため、外国人観光客からも好評のようだ。

花緒の位置を親指側にずらすことで履きやすくしている
花緒の位置を親指側にずらすことで履きやすくしている

 ほかに、阪川さんが力を入れたのが「ルーム雪駄」の開発。以前から外履き用の健康サンダルは販売していたが、部屋の中でも履きたいという要望があったためだ。

 開発を進めて販売に至ったタイミングでコロナ禍になり、家で過ごす時間が増加。自宅で仕事をしながら部屋履きし、家のなかでの移動でツボ押しができると評判になり、多数売り上げたという。心臓や肝臓のツボの位置にはわかりやすく形を入れるなど、工夫を凝らしている。

部屋履きできる「ルーム雪駄」
部屋履きできる「ルーム雪駄」
コロナ禍で多くの需要があった
コロナ禍で多くの需要があった

 パリの展示会に出展するなど、グローバルな展開を見せる大和工房の雪駄。日本の雪駄がさらに海外へと広がっていく日も近そうだ。

(取材・文=バンク北川 / 放送作家)


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