雨の日の必需品といえば「傘」。しかしながら、歴史的に見ると雨傘としてよりも、実は「日傘」としての使用が先行なのだとか。詳しい話を日本洋傘振興協議会事務局の田中正浩さんに聞きました。
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「傘の歴史は紀元前3100年ほどまで遡ります。もともと雨を避けるという機能よりも『王様を守る』という目的で、古代エジプトでは神聖な道具として使われていました」(田中さん)
傘によって“王を守る”とはどういう事かというと、田中さんいわく「目的はふたつ。『直射日光から守る』ことと『聖なる存在の威厳を守る』という意味合いがありました」とのこと。こうした史実から、そもそも雨傘ではなかったということが分かります。王に傘をかかげている様子は古代エジプト壁画にも描かれています。しかし、ひとつ驚くべきことは、当時の傘の形状は「今とほぼ同じ」だったのです。

さて、我々が日常的に使用している傘はいつ頃伝わったものなのでしょうか?「明治時代です。開国により鎖国していた日本の港が解放され、海外のモノが入ってくるタイミングで『洋傘』が入ってきたと言われています。しかし海外から輸入される洋傘は高価であり、一般庶民の手に入るものではありませんでした」と田中さん。
そのため、日本では洋傘流入後も「和傘」が使われ続けていました。和傘は“雨を避ける道具”として使われており、油を塗って水を弾く素材に加工された和紙を竹の骨組みに張ったものでした。
洋傘が日本に浸透したタイミングは明治中期。「海外から輸入された洋傘を研究しアレンジを加えたことにより、日本産の洋傘が誕生したと言われています。それから徐々に普及してきました」と田中さんは解説。とはいえ、瞬く間に広がったか…...というとそうでもなく、一部の富裕層が使用するアイテムだったとか。
「本格的に庶民の生活に浸透したのは昭和20年代と言われています。この時期からビニール傘が製造されるようになり、普及スピードはより早くなったと思われます。また、ボタンを押して傘が開く“ジャンプ傘”といわれるものも昭和20年代後半には開発されていたそうです」(田中さん)

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近年では「晴雨兼用」も登場し日々進化している傘ですが、古代エジプト時代から形状がいまだに変わっていないという点では非常に興味深いアイテムです。今後、形に何らかの変化が起こったりするのでしょうか?
(取材・文=堀田将生)



