奈良国立博物館(奈良市)は8日、「第77回正倉院展」を10月25日(土)から11月10日(月)まで開催すると発表した。織田信長らが一部を切り取ったことでも知られる名香「黄熟香(おうじゅくこう)」(=蘭奢待[らんじゃたい])や紺色のガラス器「瑠璃坏(るりのつき)」など、正倉院に伝わる宝物67件が出品される。そのうち6件は初公開品。日時指定の前売り券を販売予定で、詳細は8月下旬に発表される。

蘭奢待は14年ぶりの公開。ジンチョウゲ科の樹木に樹脂が沈着してできた香木で、名香として名高い。ベトナムからラオスにかけての山岳地帯で産出されたものと成分が近いとされる。多数の切り取られた痕跡があり、うち3か所には足利義政や織田信長、明治天皇が切り取ったとする紙箋(しせん)が付属。現在も香りの成分が残っているという。
瑠璃坏は銀の脚が付いた紺色のガラスコップ。ガラス部分は西方で作られたものだが脚には中国風の龍のような文様がある。西方産のガラス器がはるばるシルクロードを経て東アジアにもたらされ、珍重されたことをうかがわせる逸品だ。
そのほか鳥や唐草の装飾文様が寄木細工で美しく表されたすごろく盤「木画紫檀双六局(もくがしたんのすごろくきょく)」、ヤコウガイの貝殻片を用いた螺鈿(らでん)やトルコ石、ラピスラズリが埋め込まれた豪華な鏡「平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)」など聖武天皇ゆかりの品も紹介。さらに東大寺大仏の開眼法要(752年)で用いられた特大の筆「天平宝物筆(てんぴょうほうもつふで)」、円形の胴を持つ四絃の楽器「桑木阮咸(くわのきのげんかん)」なども並ぶ。
初公開は光明皇后発願の写経、楽舞用の上着など。
奈良国立博物館の井上洋一館長は「国際色豊かなものや聖武天皇の愛用品など、素晴らしい天平の息吹を感じさせてくれる宝物が一堂に会する。国内のみならず海外の皆さんにもこの機会を知ってもらいたい」と話した。

◆「第77回 正倉院展」
会場 奈良国立博物館(〒630-8213 奈良市登大路町50)東新館・西新館
会期 2025年10月25日(土)~11月10日(月) ※会期中無休
開館時間 8:00~18:00 金土日曜と祝日は20:00まで。いずれの日も入館は閉館の60分前まで。
観覧券 日時指定券を販売予定。詳細は8月下旬に発表
問い合わせ ハローダイヤル050-5542-8600
奈良国立博物館ウェブサイト





