有森裕子をメダルに繋げた“根拠なきヤル気”とは? 名言「自分で自分を褒めたい」に秘めた気持ち語る | ラジトピ ラジオ関西トピックス

有森裕子をメダルに繋げた“根拠なきヤル気”とは? 名言「自分で自分を褒めたい」に秘めた気持ち語る

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 元マラソン選手の有森裕子さんが女性を応援するラジオ番組にて、自身のスポーツ人生の原点やオリンピックへの挑戦、子どもたちへのメッセージなど熱い思いを語りました。

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 有森裕子さんと聞いて思い浮かぶのは、バルセロナ五輪の銀メダルにアトランタ五輪の銅メダル、そして「初めて自分で自分をほめたいと思います」という言葉ではないでしょうか。パーソナリティーからこの発言について尋ねられると、実は自分が作った言葉ではないことを明かした有森さん。

有森裕子さん(写真左)、パーソナリティーの安本卓史氏(写真右)

「高校2年のとき、都道府県女子駅伝の前夜祭でシンガーソングライターの高石ともやさんが、(選手たちに対して)『ここに来れたことをまず喜びなさい』『その自分を褒めなさい』と話してくれました。その言葉を心に留めながらも『それを今自分に思ったら弱いところで満足してしまうかもしれない』と感じ、しばらくは封印していたんです。でも、アトランタ五輪の後、自身が納得のいくレースを終えることができた。そこで初めて『自分で自分をほめたい』と素直に思えたんです」(有森さん)

 中学時代はバスケットボール部に所属していたものの、チームプレーが苦手で自信がつかなかったといいます。しかし運動会の800メートル走で思わぬ才能を発揮し、高校では陸上部への入部を決意。ところが、陸上部の顧問から「素人はいらない」と断られてしまいます。それでも「絶対に話を聞いてもらう」と心に決め、毎日一生懸命に目立つことを意識して行動。全員が同じ髪型・制服という女子校の中で、顧問の目に留まるよう、あえて奇抜な動きを続けたのだとか。

 1か月後、ようやく顧問から「毎日話もしないのにうろうろうろうろ、わしの前に来て。何か用があるのか」と声をかけられ、陸上部に入りたいという思いを直接伝えられた有森さん。最初は「いらない」「惨めになるからやめとけ」と否定されるも粘り強く熱意を示し、仮入部が認められました。

 入部後は朝練に毎日参加し、全力で取り組み続ける姿勢を貫きました。その結果、顧問からは「辛抱しろ」「粘り倒せ」と励まされるようになり、諦めない心が自身の最大の武器になったと振り返ります。

「何かを一生懸命やってることで、人が私に思い入れてくれる。そこから生まれるエネルギーが明らかに私を突き動かした。それを体感してから、どういう結果であろうが『諦める』という選択肢が一切浮かばないんです」(有森さん)

 大学卒業時には教員を志し、実際に教育実習も経験。しかし、ある生徒の「体育の先生はバカ」という言葉にショックを受け、自分の進路に疑問を持つようになりました。そんな中、教育実習期間中に出場したナイター記録会で、自己ベストに近い記録を出して優勝。「まだ走れるかもしれない」と希望を抱き、教員採用試験の受験を断念して実業団入りを目指しますが、当時は実績も推薦もない有森さんにとって“狭き門”。特に女子の場合は高卒採用が主流で、大卒は珍しかったといいます。そんな折、友人から「神戸のインターハイに実業団関係者が来ている」「リクルートが選手を欲しがっている」と聞きすぐに神戸へ。

 リクルートのコーチに直談判し、小出義雄監督への取り次ぎを懇願。直接会うチャンスを得ました。小出監督は有森さんに実績がないことに驚きつつも、「人間は生まれ持った素質・肩書き・実績……そういうのは山ほどあって損はない。ただ本当に大事なのは、これからどうしたいかっていう『やる気』。それだけはありそうだから、あなたの根拠のないやる気を形にしてみたい。有森さんのやる気を買いたい」と言ったそうです。こうして有森さんはリクルートに入社し、リクルートランニングクラブの一員として新たなスタートを切ります。

 有森さんのデビューは大阪国際女子マラソン。「監督からは『(途中で)やめてもいい』って言われてたんです。けど、『いやいや、岡山から珍しく親が応援に来るんです。今さら止めません』って話しました」と、当時を振り返ります。しかしながらレース中に足を痛め一時はリタイアを考えるも、沿道の少年野球チームの声援に励まされた有森さん。「この子たちの前で止めるわけにはいかない」と走り続けました。冷水で患部を冷やしながら走るという苦境のなか、日本人トップでゴールイン。当時の日本記録を更新する快挙を成し遂げました。

 ネガティブなことは考えず、練習でできたことだけを思い浮かべて走るという有森さん。「10のうち9つできなくても、1つできたことを力に変える」という思想が、彼女の精神的な強さを支え続けたと言っても過言ではないのだとか。

 番組の最後「やり始めたことは、結果にこだわらずやり終えてほしい」と有森さん。加えて「失敗も成功も活かせるかどうかで価値が決まる。その姿勢を忘れないでほしい」と強調しました。また、大人や指導者に対しては「子どもたちの頑張りを認め、支える環境づくりをしてほしい」と呼びかけ、番組を締めくくりました。

※ラジオ関西『ハートフルサポーター』2025年6月30日、7月7日、7月14日放送回より

有森裕子さん(写真右)、パーソナリティーの安本卓史氏(写真左)

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