あべのハルカス美術館で「ブラック・ジャック展」 澤芳樹医師「手塚先生によって外科医になろうと」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

あべのハルカス美術館で「ブラック・ジャック展」 澤芳樹医師「手塚先生によって外科医になろうと」

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“マンガの神様”手塚治虫さん(1928~1989年)の代表作の1つ「ブラック・ジャック」を特集した、これまでで最大規模の展覧会「手塚治虫 ブラック・ジャック展」があべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)で開かれている。500点以上の原稿、連載されていた当時の「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)などのほか、関係者の証言映像、貴重な関連資料なども公開。医療マンガの金字塔といわれる同作の魅力を味わい尽くす絶好の機会だ。12月14日(日)まで。

「手塚治虫 ブラック・ジャック展」。壁一面に原稿が並ぶ

「ブラック・ジャック」は、「週刊少年チャンピオン」で1973~1983年にかけて連載(途中、休みや不定期連載も含む)。医師免許を持たない天才外科医ブラック・ジャックがさまざまな難しい手術に挑む姿を通して、医療や生命について問うヒューマンストーリーだ。本展は新旧のファンに向け、すべての回(全243回)のすべてのページのすべてのコマ1つ1つを吟味、展示内容を決めたという。

 展覧会は4室で構成。作品に登場するキャラクターたちをパネルで紹介した第1室に続き、第2室ではベレー帽やメガネなど手塚さんの愛用品、医師免許証、「ブラック・ジャック」の新連載予告のページなどが展示されている。関係者や家族らが語る映像もあり、名作誕生の背景に触れることができる。

手塚さんのベレー帽など
手塚さんの医師免許証(右・複製)と若かりし日の写真(左)

 最大の見どころは約140話の原稿が壁一面に並ぶ第3室だ。ブラック・ジャックの過酷な幼少期、命とお金の問題、人体の神秘など、作品の軸となるテーマを挙げ、該当する回の名場面をピックアップ。読んだことがある人はストーリーを思い出し、未読の人も「読んでみたい」と思わせる展示となっている。「鉄腕アトム」など、広く知られる手塚キャラがさまざまな作品中に登場する「スターシステム」、ふだんまじめなブラック・ジャックが見せる変顔などの「ギャグコマ」、老若男女、動物にも愛されるエピソードを集めた「私が愛した医師」などのコーナーも見逃せない。

 第4室は、作品に描かれたリアルな手術シーンや医療の観点から見た説明、昭和のニュース映像を流しながら作品の時代背景を読み解く展示など。さらに会場外のエレベーターホールには、特設フォトスポットも登場。白衣を着用(無料)してブラック・ジャックと記念撮影できる。

『ブラック・ジャック』第45話「めぐり会い」(c)Tezuka Productions
会場外の特設フォトスポット。白衣を着て記念撮影できる

 手塚さんは、大阪帝国大学附属医学専門部(現・大阪大学医学部)を卒業した医学博士でもある。開幕に先立つ内覧会では、同大学名誉教授でIPS心臓開発者、大阪・関西万博パソナ館プロデューサーの澤芳樹医師がトークショーを行った。澤医師は、自身が学生だった1978年ごろ、大学の学園祭に手塚さんを招き講演してもらったエピソードを披露。「手塚さんは『君たち、医者になる前に、もう一度何のために医者になるのか考えてください』とおっしゃった。それが心に突き刺さった」と明かし、「ブラック・ジャックの作中にも『医者はなんのためにあるんだ』というシーンがある。僕はいい加減で中途半端な学生生活を過ごしていたが、手塚先生に大きな影響を受けた。当時は何科に行くか決めていなかったが、手塚先生によって潜在的に外科医になろうと(いう決心を)与えられた。国家試験に通り、外科に入った時から、何のために医者になるんだということを頭にスイッチが入った。もう40年経つが、まだスイッチを切っていない」と語った。

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