今月29日(土)より、「芸術文化観光専門職大学(以下、CAT)」(兵庫・豊岡市)で実習を兼ねた舞台公演がはじまる。平田オリザさん(劇作家・演出家)のラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)では、出演する学生が本作品の魅力について語った。

CATでは、舞台芸術実習の一環として、第一線で活躍するアーティストと学生が協働し、本格的な舞台作品を制作・上演している(以下、PAP:パフォーミングアーツプロジェクト)。今年度は、4年ぶりに平田オリザ学長自らが担当。20年前に手がけた作品を学生向けに書き直し、現代にアップデートして上演する。
オーディションで選ばれた俳優・スタッフ約90人が参加する一大プロジェクトだ。学生たちにとっては、プロの現場に近い形で作品に参加できる貴重な機会となっている。
今回上演される『もう風は吹かない』は、青年海外協力隊の国内訓練所が舞台。 国際協力事業団(JICA)からの派遣を待つ候補生たちが、日々の訓練に励んでいるのだが、彼ら彼女らは、財政破綻した日本からの最後の協力隊員だった。彼らはここで、どのように未来を見つめるのかーー。
平田オリザさんが描く、混沌のなかをあがく若者たちの選択の物語は、20年前に描かれたとは思えないほど現実味を帯びている。
番組ゲストの宮内美彩希さんと高良日菜さんは、見事オーディションを突破した2人の学生だ。
宮内さんは福井県出身で、アートマネージャーを目指していたところ、いつしか役者の魅力に取りつかれた。高良さんは沖縄県出身で、高校時代にNHKのど自慢でグランドチャンピオン大会に出場した実力派だ。
宮内さんは所員を、高良さんは食堂で働く女性を演じる。開幕を間近に控え、通し稽古を繰り返すようになり、緊張感も高まっている。特に、青年団の俳優たちとの共演は、彼女たちにとって貴重な学びの機会となっているようだ。
オーディションは、プロの現場さながらの厳しい選考過程だったという。今年は2次審査まで実施され、学生たちは緊張のなかで自分の可能性に挑戦した。
1次審査では朗読と自己PRが課され、2次審査では2人1組でのペア演技が行われた。平田さんの指導のもと、学生たちは演技の可能性を探っていく。
宮内さんは全体を俯瞰できる立場の役柄で、作品全体の魅力を客観視できるポジション。だからこそ、自然に“その場にいる”必要があり、苦戦しているという。
「プロの俳優たちから学びながら、自然に舞台に存在することの難しさと魅力に挑戦しています」(宮内さん)
高良さんも、「普段参加している自主公演とは違い、さまざまな属性の方々と作品をつくることができる楽しさと学びがあります。悩みながらもプロの俳優に相談しながら進めていくことができ、その悩み自体がたいせつなものに思えてきています」と充実した様子だ。
番組では、平田さんの誕生日をトマトジュースで祝ったエピソードなども披露され、厳しくも和やかな座組の雰囲気を伝えた。





