兵庫県姫路市の住宅で2023年、寝たきりの娘を置き去りにし、窒息死させたとして保護責任者遺棄致死罪に問われた母親(32)の裁判員裁判で、神戸地裁姫路支部は11月28日、懲役2年8か月の実刑判決(求刑・懲役4年)を言い渡した。
判決によると、母親は気道確保のために痰(たん)の吸引が必要な娘(当時8歳)を自宅に置き去りにし、2023年1月27日午後に外出。翌28日午前までに窒息死させたとされる。
次女は脳に重い障がいがあり、寝たきりで自力で痰を吐き出せないため、家族や介護者が日常的に行う「医療的ケア」として吸引が必要だった。
母親は長女・長男・亡くなった次女と4人で生活するシングルマザー。外出後は当時交際していた男性と会っていた。

母親は、「娘は睡眠時に、わざわざ起こして痰を吸引する必要はなかった。事件の日も、痰の吸引を済ませて、寝たことを確認した後に外出した。娘が危険な状態になることを認識しながら置き去りにして外出したのではない」と主張していた。
しかし、医師や看護師は法廷で、「(娘は)通常時は数時間おきに痰を吸引しなければならず、眠っている途中でも痰の吸引をしなければ窒息して死亡してしまう危険があった」と証言。「寝ているときの体勢や肺活量の問題で、咳込んで痰を自力で排出することは困難」とした。
判決で神戸地裁姫路支部は、娘を放置すると窒息する危険性があり、母親はそれを認識していながら外出したと指摘し、「被告の浅はかな行動が、最悪の結果を招いてしまった事案だ」とした。そして、「息ができない苦しみと母親がそばにいない寂しさの中で亡くなった娘は哀れというほかない」と強く非難し、「母親の行動の危険性、結果の重大性に照らせば、刑の執行を猶予するのは難しい」とした。
一方で、母親は事件当時、仕事をしながら娘以外の2人の子供を養育し、一時的な介護施設を利用するのも難しい環境で、負担がかなり大きかったという状況を考慮し、本来課すべき量刑(3年以上20年以下の拘禁刑)から大幅に減軽(酌量減軽)した。
最後に裁判長は、「決してひとりで頑張らず、いろいろな人に頼ることを考えて。娘がどのような気持ちで亡くなったかを思い、冥福を祈ることが出発点だ」と母親を諭した。





