全国7施設でしか見られない?絶滅危惧動物「コアラ」 兵庫・神戸の王子動物園では繁殖進める取り組み

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 兵庫県の「神戸市立王子動物園」は2026年に75周年を迎える歴史ある都市型動物園です。総面積8万618平方メートルの園内では約120種650点の動物が飼育されており、中でも人気なのがコアラ。国内ではこちらを含む7園で59頭(2024年12月31日時点)が飼育されており、うち7頭が同園で生活しています。そんなレア動物・コアラについて、担当者に詳しく聞きました。

訪れた人々を笑顔にする愛らしいコアラ(画像提供:神戸市立王子動物園)

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 有袋類に属するコアラはオーストラリア東部に生息する動物です。彼らは単独性で主に樹上で暮らしており、ユーカリを主食としています。赤ちゃんコアラは約2センチの未発達状態で外界に出産されると、自力で母親のおなかの袋に入ります。その中で育ち、半年ほどすると袋から顔を出すのだとか。

 しかしながら大規模森林開発や交通事故などに加え、近年の森林火災などが起因し「IUCNレッドリスト」においてVU(危急)に分類されているという現実も。コアラを絶滅から守るため、同園は他園と協力しながら繁殖を実施しており、その結果、これまでに21頭が誕生。「生息域外保全の取り組みのひとつとして、今後も引き続き繁殖を推進し貢献していきたい」と担当者は話します。

 さて、同園にコアラがやって来たのは1991年9月のこと。翌10月から観覧がスタートしました。当時の状況について担当者は「オーストラリア政府の許可が必要で、施設・飼育体制・飼育実績やユーカリ栽培状況など詳細な飼育計画書の提出要求があり、東京のオーストラリア大使館と何度も協議を重ねました」と振り返ります。

 とはいえ、日本で8番目の飼育導入だったこともあり、施設や飼育について十分な調査ができたそう。飼育施設に太陽光を取り入れる工夫や観客の見やすさを考慮したほか、感染症が発生した場合に広がるのを防ぐため展示場を2室に分割。隔離室も設け衛生管理などにも気をつかったといいます。

神戸市立王子動物園の入り口(画像提供:神戸市立王子動物園)

 現在、リニューアル計画が持ち上がっている同園。その一環として、コアラ館周辺のエリアを「オーストラリアゾーン」として整備する計画も進行しています。これについて担当者は、「動物ファーストの獣舎整備を行うことはもちろんのこと、オーストラリアに生息する動物を集約し、より没入感や動物同士の結びつきが学びやすい展示を目指します」と説明。さらに来園者へのガイドイベント等を実施し、彼らの現状について知ってもらう取り組みも引き続き行っていきたいとのことです。

コアラを守るために様々な取り組みが行われている(画像提供:神戸市立王子動物園)

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 コアラの保全に力を入れつつ、今後も様々な取り組みを通じて動物たちの現状を発信していく神戸市立王子動物園。最後に担当者は「これからも愛される動物園を目指します。コアラはもちろん、かわいくて愉快な動物たちに会いに来てもらえると嬉しいです」とコメントし、インタビューを締めくくりました。

(取材・文=長塚花佳)

※ラジオ関西『Clip』水曜日 2025年12月17日放送回より

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