神戸市西区で2023年6月、男児(当時6歳)が虐待を受け死亡した事件で、傷害致死・死体遺棄罪に問われた男児の母親(A・37)、双子の叔母2人(B、C・32)の裁判員裁判が12月10日、神戸地裁で開かれ、検察側はAに懲役8年、B・Cに懲役7年を求刑した。判決は来年(2026年)1月14日に言い渡される。
起訴状によると、3人は同居していた叔父(34)と共謀して2023年6月19日、神戸市西区の自宅で、床にうつぶせにした男児の背中を鉄パイプで多数回殴ったり、踏みつけたりして死亡させ、同日夕には遺体をスーツケースに入れて草むらに遺棄したとされる。男児の死因は外傷性ショックだった。

■「いっそ、自分たちで暴力を振るったほうが…手加減できるから」叔父の暴力的支配を強調
法廷でA、B、C3被告は、「鉄パイプで男児を多数回殴らされるなど、暴行は叔父の指示だった」と述べるなど、叔父に精神的に支配された家庭環境が明らかになった。
このうちB、Cは被告人質問で、「(叔父に)逆らうと暴力を振るわれる。当時は暴力が良いことか悪いことかもわからなかった」と述べ、叔父から洗脳されていたという趣旨の証言が続いた。
また「いっそ自分たちが(暴力を)振るったほうが、叔父が暴力を振るうよりもましだと思った。手加減できるから」とも述べた。そして、「近所付き合いもなく、友だちもおらず、誰にも助けを求めることができなかった」と振り返り、「自分にも責任がある。今となっては、そう思う」と涙ぐんだ。
検察側は、事件が起きる約2か月前に保育士らが家庭訪問した際、「A・B・Cは助けを求めることができたのではないか」と追及したが、3人は「助けを求めれば自分たちが暴力を振るわれると思った」と述べた。
児童相談所に相談しなかった理由について、母親であるAは、「(男児と)離れ離れになりたくなかった。自分で育てたかった」と話した。
その一方で、「(母親として男児を)勇気を出してかばうべきだった」と後悔の念を述べた。
これらの証言について検察側は論告で、「自身へさらなる暴力が及ばぬよう、傍観するのみだった」と強く非難。Aに懲役8年、B・Cに懲役7年を求刑した。
一方、弁護側は3人には知的障害があることから、「従来から叔父に逆らえず、違法な行為ではなく適法な行為を選択し、犯行を回避できる『期待可能性』がなかった。叔父による暴力的・精神的支配がエスカレートし、逆らうと、さらに暴力を受ける危惧があった」と主張、無罪や執行猶予付き判決を求めて審理を終えた。
なお、3人とは分離して審理される叔父の公判日程は決まっていない。





