オリンピックや国際大会などで目にする機会の多い陸上競技場・フルマラソン。様々な「豆知識」を、日本陸上競技連盟施設用器具委員会の副委員長かつ国際道路コース計測員でもある苅込英昭さんに聞きました。

●なぜ42.195kmなのか?
じつは「王妃のワガママ」という説があるとか。初の42.195kmでマラソンレースが行われたのは、第4回大会のロンドンオリンピック。しかし、本来の距離は41.843km(26マイル)で設定されていました。ですが、当時のイギリス王妃であったアレクサンドラ・オブ・デンマークが「スタートはウィンザー城の庭で、ゴールはロイヤルボックスの前で見たい」と注文をつけたため、距離が延長されたといわれています。その後のパリ五輪で42.195kmは正式なものとなりました。
●フルマラソンのコースの数はどれくらい存在している?
日本陸連のホームページによると、100kmやハーフも含めた長距離マラソン全てのコースは224本とのこと(2025年3月末時点)。そのうちの84本がフルマラソンのコースだとか。各都道府県には最低1つフルマラソンもしくはハーフマラソンのコースがあるそうです。

●コースの距離の計測方法
苅込さんは「ふたつの方法がある」と回答。
〈ワイヤー計測〉20人ほどで1つのチームを作り、50mのワイヤーを手で引っ張りながら距離を測ります。具体的には「ワイヤーを持って走り、50m地点でマーキング」という作業を延々と繰り返すのです。 単純計算すると1kmは20回、フルマラソンにもなると844回行うことになります。
〈自転車による計測〉前輪の車軸に「ジョーンズカウンター」と呼ばれる器具を取り付けた自転車で計測します。しかしながら、気象条件・計測員の体重・自転車のタイヤの空気圧等、日により測定状況が異なります。そのため、まずは検定用の鋼製メジャーを用いて正確に測った400mコースを作成。ここを自転車で走り、1Kmあたりの数値を計算式によって算出します。このとき計測員に求められるのは「コースの最短をとるよう自転車をまっすぐに乗る技術」。これは誤差を限りなく少なくするという目的があります。こうして出された計測結果から距離の調整を行い、コースを決定していきます。1回の計測を3人で行い最も短い距離を採用しますが、誤差はフルマラソンの距離でもわずか20m以内。その精度はかなり高いものと言えそうです。「ワイヤー計測は人数も時間も要するため、現在では自転車計測スタイルに移行しています」と苅込さん。
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ちなみに、マラソンコースの公認期間は5年間だそう。期間切れになる前に計測をするルールになっているため、224あるコースを5年に1回のペースで再測定する必要があるとか。ランナー以外に関わる人々の労力や今回の豆知識をふまえて観戦すると、フルマラソンがもっとおもしろく感じられるかも知れませんね。

(取材・文=堀田将生)



