中央ヨーロッパのハンガリーでは、温泉に入りながらチェスをプレイする文化が存在するとか。どういったものなのか、20年以上ハンガリーで暮らし情報発信サイト『旅して暮らすハンガリー』を運営する本宮さんに詳しく聞きました。
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ハンガリーは国内全体で1300か所以上の温泉源がある「温泉大国」。首都ブダペストは地下に豊富な温泉水脈があるため、病院やスパ施設・ホテル併設のものなどを含めると市内だけでも50か所程度の温泉施設があるのだとか。日本のような「日帰り温泉」に近い感覚の施設もあり、観光客はもちろん地元の人も日常的に利用しているそうです。
「日本と違うのは、ハンガリーでは『水着の着用』『混浴』が主だという点。また朝からゆっくり入浴するスタイルのため、夕方には閉館してしまう施設が多いですね。治療やリハビリ目的のシニア層が多いのは日本と似ています」(本宮さん)

さて、温泉でチェスを楽しむ……とはどのような文化なのでしょうか。
「『温泉チェス』と言われるもので、有名なのはブダペスト市のセーチェーニ温泉です。市内でも最大規模を誇り、『ブダペストの温泉といえばまずここ』と言われるほどの施設です」(宮本さん)
温泉チェスは屋外温泉プールの中で防水仕様のチェス盤を使ってプレイしている光景のことを意味するとか。特に冬になるともくもくと上がる湯けむりの中で見られるため「風物詩」として語られているそう。特別なイベントや公式のサービスなどではなく、常連の年配客がチェス盤を持ち込み楽しんでいるといいます。
「チェス自体は他の温泉施設でもたまに見かけるそうですが、これほど日常的かつ象徴的な光景として定着しているのはセーチェーニ温泉くらい。施設規模が大きいこと、常連客が多いこと、屋外プールが充実していることが理由ではないかと思われます」(宮本さん)

温泉でわざわざチェスをする理由について、宮本さんは次のように述べます。「自然発生的に定着した文化のようです。ハンガリーはチェスがとても身近な国で、特に年配男性の間では日常的な娯楽。セーチェーニ温泉は温度がぬるめで長時間入れるため、体を温めながら会話や頭の体操をするのに、チェスがちょうど良かったのだと思われます」。

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「公園のベンチで囲碁将棋を楽しむお年寄り達の光景に似ているかも」と感じた筆者。“自分時間”をゆったりと過ごす牧歌的な姿は、ここ日本でも見ることができるかもしれません。
(取材・文=つちだ四郎)

【取材協力】旅して暮らすハンガリー
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