韓国の住居形態「オクタッパン」を知っていますか? 韓国を舞台としたドラマや映画ではよく出てくるスタイルなのだそうですが、実際どういったものなのでしょうか。韓国語教室「ハングルちゃん」(東京都新宿区)の内田さんに聞きました。
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オクタッパンとは、ヴィラ(低層のマンション)の屋上に設けられた住居スペースのこと。日本では『オクタッパンの王子(邦題:屋根部屋のプリンス)』が大ヒットしたことで広く知られるようになりました。内田さん自身、オクタッパンに住んでいたことがあるそう。「約30年前に半年ほどです。本当に簡単な作りで、当時はとにかく雨の降る音がうるさかったという記憶があります」と振り返ります。

登記上はあくまで「倉庫」だそうで、6畳から8畳くらいの広さの部屋に簡易的な台所・トイレ・シャワーだけ。押し入れやクローゼットといった収納も備わっていないことがほとんど。ほぼ「掘っ立て小屋」なので壁に断熱施行などされておらず、夏は暑く冬は寒いうえ防犯的にも問題があるとか。
「安いという以外にメリットはないので、私の感覚としてはオクタッパンが韓国人から人気というのは絶対にないと思います。お金のない若い男性が住む場所ですね。当時は、“オクタッパンに住んでいる=貧乏”というイメージでした。あまり親しくない人には、『オクタッパンに住んでるよ!』とは言いにくい雰囲気がありました」(内田さん)
日光浴や屋上バーベキューなど工夫次第では立地をいかした楽しみ方ができそうですが、まともに日常生活を送るにはデメリットの方が圧倒的に多いオクタッパン。大家が少しでも収入を増やそうと目論んで建てていた……という背景もあり、建築基準ギリギリのいわゆる「グレーゾーン的存在」だといいます。
一方で、若者が夢と希望を持って住む部屋というイメージも持たれていたとか。「ソウルに上京してきた人からすると、"憧れの場所"になっていたのかもしれません」と内田さん。

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昔ながらの過酷な居住環境では入居者が現れないため、現在はクローゼットやエアコンを備えた物件も登場しているのだとか。しかしながらそうした努力虚しく、オクタッパンはどんどん姿を消しています。かつて夢見る若者達を支えたつつましい住処は、もはや「過去の遺物」となりつつあるのかもしれません。
(取材・文=つちだ四郎)





