昨年、天皇杯優勝を成し遂げたFC町田ゼルビア。その指揮を執る黒田剛監督が指導者人生からプロ転身の決断、そして自身の根底にある“勝負哲学”について語りました。

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監督にとって大きな転機の年は2021年。青森山田高校で目標としていた三冠を達成したことでした。しかしながら、当時の心境についてつぎのように振り返ります。
「すべてを達成した時に、自分の気持ちが少し折れた。あとは下るしかなくなってしまった」(黒田監督)
ネガティブな気持ちになっていたときに舞い込んだのが、プロの世界からの誘いでした。教員として定年まで勤め上げる道もありましたが、監督は当時52歳。次世代のコーチ陣の成長も見据えた上で「今このオファーを選んだ方が、自分の人生で後悔しないだろう」と判断。28年にわたる教員人生にピリオドを打ち、「プロ」という新たなステージでの挑戦を決意したといいます。
就任が決まった当初、クラブ内では「高校の監督ではプロは無理だろう」という声も少なくなかったとか。しかし代表取締役社長兼CEOの藤田晋氏は、変化のないローテーション人事よりも青森山田で勝ち続けてきた黒田監督の勝負強さが生む「化学反応」に期待し、反対意見を押し切る形で招聘を決断しました。
監督は「自分はプロを知らないから教えてくれ」と素直な言葉を周囲に伝えました。また、ワールドカップ経験者や外国籍選手からも積極的に学び、チームづくりを進めたといいます。
世間からは「勝利至上主義」と評されることが多いものの、実際は“気にしいで心配性”だとか。「いつも不安。だからこそ細部まで徹底的にこだわり、負ける要素を一つずつ潰していくという作業を何よりも大切にしています」と話しました。プロの長いシーズンでは、連敗による自信喪失が最も恐ろしいものなのだとか。そのため、キャンプの段階から負けた時に立ち返るベース(原点)をチーム内で明確に設定していたそう。
たとえ敗戦を喫しても「俺たちのサッカーはこうだったはずだ」と共有できる映像や言葉を持ち、冷静に軌道修正を図る……その徹底したマネジメントが、町田ゼルビアの躍進を支えたと言っても過言では無さそうです。
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「タイトルを目指し、結束力をさらに高めていきたい」と力強く意気込む監督のもと、J2優勝・J1昇格初年度リーグ3位・ACLE出場権獲得、そして天皇杯での優勝。チームはいま、着実に結果を積み重ねています。

※ラジオ関西『ハートフルサポーター』2026年1月12日、19日放送回より




