夏の星座のひとつとして知られる「こと座」。1等星ベガは織姫星として知られ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブと、夏の大三角を形作ります。
こと座は、日本付近では春から秋まで、宵の空で輝きます。夏には頭上高くで見ることができます。その歴史は古く、紀元前1200年頃には誕生していた星座とされ、古代ギリシャで流行した竪琴の姿を写し出しています。この竪琴は西洋のハープの原型となる楽器「リュラ」とされています。

その「こと座」の名を冠した「こと座流星群」が、4月23日午前4時40分ごろに極大になると予想されています。放射点は、こと座ではなく境界付近のヘルクレス座にあり、夜半前から東の空に昇り、薄明の頃には天頂近くに到達します。流星は22日午後10時頃から見え始めると予想されていますが、この頃の空にはまだ明るい月があります。月は23日午前0時頃に沈むため、その後、午前3時頃からが明け方にかけて流星観測のチャンスとなりそうです。空が暗いなど条件が整った所では、1時間に10個ほどが流れると期待されます。
この流星群は、ピークが限定的で、1日ずれると出現する数が3分の1程度に減ってしまうと言われています。ただ、過去には突発的に出現数が増えたことがあり、1982年にはアメリカで1時間に70~100個流れたという記録も残っています。果たして2026年はどうなるのでしょうか。
こと座流星群の歴史も古く、紀元前687年に中国で初めて観測されたとの記録が残っています。母天体は周期400年以上というサッチャー彗星。次に太陽に近づくのは2283年と予測されています。
流星群にとって、月は明るすぎる存在ですが、こと座流星群の前後には月と木星の競演が見られます。22日から24日にかけてほぼ半月状の月とマイナス2.1等の明るさの木星、そしてその近くにはふたご座の1等星ポルックスと2等星カストルもあり、にぎやかになりそうです。
さかのぼって、19日には月とマイナス3.9等の金星が接近。この日の月は、新月の日を1日目とするとまさに3日目の月・三日月で、イメージより「細い」ということがわかるかもしれません。
さて、2026年4月にはこんな楽しみもあります。明石市立天文科学館の井上毅館長は「注目の彗星が出現しています。しかも2つ!」と話します。
1つ目は、今年1月に発見されたばかりのマップス(MAPS)彗星です。
マップスとは、チリの天文台でアマチュア天文家によって行われている小天体を捜索するプロジェクトの名前で、その名を冠した彗星は、はるか昔に分裂した巨大彗星の破片とされています。4月4日に太陽に最も接近(近日点通過)、しかも極めて近い所、0.005天文単位(太陽と地球の距離が1天文単位)を通過します。「軌道が太陽に近いと、多くは太陽の熱にあぶられて消滅しますが、時々生き残って非常に明るくなることがあります。仮に崩壊しても核が生き残れば、1週間後には大彗星になる可能性もあります」と井上館長。夕方の空で0~1等まで明るくなるかもしれませんが、どうなるか。「歴史的な大彗星になる可能性もありますが、彗星本体がかなり小さく、崩壊しそうな気配もあります。その行く末を見守るのも大事な観測です」。
このマップス彗星(C/2026 A1)は3月下旬にはくじら座にあって、4月にはうお座へ。4月下旬にはおうし座、5月にはオリオン座に移動します。とはいえ、これは近日点通過を乗り切った後の話。いずれにせよ、楽しみが増えそうです。
「もう一つの彗星は、確実に観測できそうです」と井上館長が太鼓判を押すのがパンスターズ彗星(C/2025 R3)です。2025年9月に、アメリカ・ハワイにあるパンスターズ望遠鏡によって発見された彗星で、4月20日に太陽にもっとも近づき、26日に地球に最も近づきます。4月中旬の新月前後、4月下旬から5月上旬の早朝・夜明けの頃が観測のチャンス。明るさは3~5等級で、「双眼鏡があるとその姿を捉えられるでしょう」。
2026年4月、いつもとは一味違う星空が楽しめそうです。
(参考:国立天文台HP 協力:明石市立天文科学館 井上毅館長)




