篠山城の南堀では、かつて蓮の花が一面に咲き誇り、夏の風物詩として市民や観光客に親しまれてきた。しかし、2005年ごろに突然消滅。丹波篠山市と地元小学生らが種レンコンを移植し、昨年は15年ぶりに蓮の花が開花。今年も順調に生育しており、開花が確認されている。
ところで、蓮の花が突如消えてしまったのはどうしてだったのだろうか? 主な理由として、外来種のアカミミガメが蓮の新芽を食べたことが原因だと考えられている。もともと北アメリカに生息しているアカミミガメは、1950年代後半から「ミドリガメ」の愛称でペットとして日本に輸入されるようになる。10年ほど前までは丹波篠山を代表する夏の大イベント「デカンショ祭」に「かめつり」の夜店があった。そういうところからペットとして飼育されていたものが捨てられたり、逃げ出したりして、野生に広がるようになったと推測されている。
また、被害は蓮の花だけではない。アカミミガメが増えたことで、在来種であるニホンイシガメが減少してしまった。カメが生きていくためには、日光浴がとても大切で、日光浴によって体温を上げ、甲羅や骨を強くする。アカミミガメは日光浴の場所やエサなどを奪うことで、ニホンイシガメに悪影響を及ぼすと言われている。さらに、アカミミガメがニホンイシガメの卵を食べてしまうという報告もある。ニホンイシガメは準絶滅危惧種に指定されている生物なので、外来種のアカミミガメを駆除しなければならなくなった。
丹波篠山市は、市民や専門家などと対策協議会を立ち上げ、2014年からアカミミガメの捕獲を実施してきた。罠や捕獲網を使ってこれまでに1311匹を駆除してきたが、まだ100匹ほど残っていると推定されている。目標はアカミミガメの根絶だ。過去2度にわたり、南堀の水を抜いてアカミミガメなどの外来種を捕まえるイベントを開催した。だが、アカミミガメは魚と違い、水を抜いても陸上に逃げることができてしまうため、ほとんど捕まえることができなかった。
そこで今回登場したのが「回収ポスト」。近隣住民から「堀のまわりで見かけた」「家の近くで捕まえたけど、どうしたらいいか」といった問い合わせが増えてきたことから、市民の協力で捕まえたカメを引き取るポストと電話相談ダイヤルを設置することにした。
捕獲の勝負は産卵のために上陸する5月から7月にかけての、まさに今の時期。堀の中は立ち入り禁止だが、周囲は散策路になっているため、上陸したメスガメやふ化した子ガメを見かけた際に捕まえてもらいたい。
アカミミガメがよく出現するのは、東堀と内堀で、日光浴をする午前中が狙い目。ただ、動きが速く力も強いので、意外と捕獲は困難。また、かまれることがあるので、口の前に指を出したり、爪で引っかかれないように注意する必要がある。さらに、間違ってクサガメを捕獲しないように要注意。アカミミガメの特徴は、顔の横に赤い線があり、お腹は黄色。一方、クサガメの腹部は黒色なので、そこで見分けてほしい。