天守閣などの建物は残っていませんが、洲本城というと、縄張りと石垣がとにかく素晴らしいとされています。西日本最大の要塞といわれ、戦国時代の城郭の様式をよく表しているうえに、保存状態がいいことから、1999年に国の史跡に指定されました。
山頂に築かれた城に加え、山の麓にも「御殿」などの建物がありました。その「上の城」と「下の城」を結んでいたのが「登り石垣」です。全国に3か所しか残っていません。階段状の石垣で、洲本城には東西に2つ築かれました。現在は崩れる恐れがあるため近づくことはできませんが、こんなところを通っていたのかと、思いを巡らすことができます。
現在、本丸がある山頂へは、遊歩道・登山道で歩いて登ることが可能です。登山口からおよそ20分です。しんどいな〜という人には、車で一気に馬屋まで上がることができます(実際、多くの人が車で訪れているようです。ただ車では登り石垣は見られない……)。
その馬屋で、洲本城跡にあるもう一つの洲本八景、紀淡海峡が広がる「マリーナの展望」を楽しみましょう。海峡の先端が和歌山県の友が島、右側が由良です。
その馬屋から、石垣の間を縫うようにして本丸を目指します。本丸へ続く大石段は迫力満点です。さらに細かいところに目を向けると、石の積み方も洲本ならではのものがあります。近江国穴太の石工達の石垣の積み方「穴太(あのう)積み」。割石を横に積んでいくつかの石で横目地が通るように組まれています。
また、石垣の角度は通常90度ですが、鈍角に積む鎬角(しのぎずみ)が用いられ、東の丸の武者溜(むしゃだまり)などで見ることができます。
このほか、洲本城は植物の宝庫といわれています。6月に花を咲かせる「シロミノヤブムラサキ」は、城がある三熊山で発見された世界でただ1本の木です(本丸から西の丸に向かう途中にあります)。このほか、登山道を歩いていると、様々な植物に出逢えるとともに、鳥たちのさえずりも聞こえてきます。