例えば、「『著者の玉岡かおる氏は作品を書き上げるためにビューンとロンドンまで飛んでいき、主人公よろしくガガガーッと取材し、パチパチッと写真を撮ってサササっと書き上げたあともシュッとしているタイプ』である」というように。
千年の都・京都を飛び出し、海外から異国の文化が流入してくる港町・神戸にビジネスの活路を求めて、伝統が培った精緻なる日本の工芸品の技術を世界に認めさせ、自身の呉服商を皇室御用達にまで高め近代化された百貨店に育て上げていく……。
玉岡さんは今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍や1995年の阪神・淡路大震災被災の経験から、「先人たちが頑張って歯を食いしばり、幾たびかの戦災・自然災害を乗り越えてきてくれたからこそ今がある。このががはんのように今あるものをいかに使うか、また、これらを武器にして自力復興を果たすかが大事ではないか」と語った。
巻尾に書かれている久坂部羊氏の解説「豪華絢爛な一代絵巻」も玉岡ファン必読の素晴らしい読み応えである。
「女性が元気になると国は栄える」と言った人がいる。いつか多くの読者が玉岡さんの作品を起爆剤に羽ばたいていってほしいと念じて結びとさせていただく。
(取材・文:黒川良彦)
玉岡かおる
1956(昭和31)年、兵庫県三木市生まれ。神戸女学院大学文学部卒。1987年「夢食い魚のブルーグッドバイ」で神戸文学賞を受賞。2009年「お家さん」(新潮社)で織田作之助賞受賞、テレビ化、舞台化された。
主な著書に、「天涯の船」「銀のみち一条」「負けんとき」「天平の女帝 孝徳称徳」(以上、新潮社)、「タカラジェンヌの太平洋戦争」(新潮新書)、「自分道」(角川新書)、「虹、つどうべし」(幻冬舎)など多数。近著は「姫君の賦 千姫流流」(PHP研究所)で、2021年春にオペラ化が決定している。
執筆の傍ら、大阪芸術大学教授、兵庫県教育委員を務める。
※以下の写真は玉岡さんが実際に足を運んで取材したもの(ロンドンV&A美術館所蔵)
「花になるらん―明治おんな繁盛記―」
玉岡かおる著(新潮文庫)
発売日 2020年4月1日
ISBN 978-4-10-129624-1
定価 880円(税込み)
電子書籍 価格 880円(税込み)
電子書籍 配信開始日 2020年6月19日
新潮社ホームページより
https://www.shinchosha.co.jp/book/129624/
玉岡かおるさん ホームページ
http://tamaoka.info/