いよいよ22日から始まった「GO TO トラベルキャンペーン」。「東京発着は除外」「キャンセル代は補償されるのか?」等、すったもんだの苦難の船出となっているが、観光に携わる業界にとっては死活問題。感染拡大防止と経済活性策の両輪をまわすことは可能なのか? コロナ禍の前には「インバウンド施策の超優等生」と呼ばれた兵庫県内有数の観光地、城崎温泉観光協会(豊岡市)の高宮浩之会長に聞いた。高宮さんは創業350年を迎える老舗旅館「山本屋」の代表取締役社長でもある。
・城崎温泉はことし開湯1300年の記念すべき年
奈良時代の717年、道智上人(どうちしょうにん)という僧侶が、人々の難病を救うためにこの地で千日間の修行を終え、720年に温泉がわき出したと言われる。明治期には鉄道が城崎まで開通。風情ある外湯めぐりで人気を博し、1925(大正14)年に「城の崎にて」を発表した志賀直哉をはじめ、多くの文豪にも愛された。足をのばせば美しい竹野浜海岸、皿そばが有名な城下町・出石(いずし)など周辺に見所も多く、2013(平成25)年には「ミシュラン・グリーンガイド・ジャパン」で2つ星を獲得するなど、今では世界のツーリストに人気だ。
・インバウンド施策の超優等生!5年で外国人観光客が36倍に!
政府が「観光立国日本」を打ち出し、各地で外国人観光客の誘致政策が打ち出されるようになると、以前から「国内の集客だけではいずれ厳しくなる」と感じていた城崎でもインバウンドに目を向け始めた。しかし、城崎温泉は客室数が10~15程度の家族経営の旅館が多く、中国人の団体客などを受け入れることができない。また、外湯などでマナーを保てなければ日本人のリピーター客にも影響する。そこで英語圏を中心とした個人旅行客に絞ることからスタートした。
高宮さんは言う。「街中が多言語の表記になってしまうような、風情のないことはしたくなかった。伝えるべき情報はウェブやパンフレットでも理解してもらえる。たとえば欧米のお客さんは、日本人ほど『冬のカニ』に興味がない。むしろ、ありのままの城崎を受け入れ、浴衣を着て下駄を履いて街を歩き、文化を体験する」と。
城崎では欧米の個人客にターゲットを絞り、ウェブでのPRに力を入れて地域の文化をしっかり伝えた結果、口コミや海外の旅行サイトで評判を呼び、決して便利とは言えない立地をもろともせず多くの外国人観光客がやってきた。
・順風満帆に思えた城崎温泉にもコロナ禍は直撃
城崎温泉観光協会 公式サイト
https://kinosaki-spa.gr.jp/