「山の日」 蝉しぐれを包む祈り 書写山円教寺

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■見えぬ敵との闘い、 霊峰から終息祈祷 

「西の比叡山」と称される書写山円教寺(姫路市書写)では毎日正午、 摩尼殿で唱える真言が蝉しぐれを包み込む。

書寫山
書写山

 諸説あるが、山号「書写(しょしゃ)」の由来は、素盞嗚命(スサノオノミコト)が山頂に降り立って一宿したという故事により「素盞(すさ)」からのものといわれている。 姫路市と合併する以前は、このあたりは山麓も含めて飾磨郡曽左村と呼ばれていたが、この「曽左(そさ)」も「素盞」に由来するという。

圓教寺・摩尼殿へ続く石段
円教寺・摩尼殿(まにでん)へ続く石段

 現代人にとって未知なる疫病、新型コロナウイルス。姫路市内でも93人の感染者が確認される(8月9日現在)など、新規感染者の数は拡大している。円教寺法務部長で、塔頭・妙覚院の中安剛円住職が1日も早い終息を願い、緊急事態宣言発令前の3月22日から絶やすことなく疫病退散の祈祷を続けている。

摩尼殿の祈祷
摩尼殿の祈祷

 祈祷は円教寺の本堂・摩尼殿の秘仏本尊・如意輪観音の化身、弁財天の供養法で厳修され、天台密教で病気平癒などの祈願で唱える大般若経の五百七十八巻目・理趣分(りしゅぶん)が耳から体へ染み入る。毎日Facebookやホームページでライブ配信しているが、大樹玄承執事長は「皆さまにはご自宅や職場で、同じ時刻に一瞬でも一緒に祈っていただければと思う。また実際に摩尼殿にお越しになられた際には、ぜひ私どもと同じ空間を共有できたら」と話す。

オンライン配信は毎日正午から
オンライン配信は毎日正午から(手前が固定カメラ)

 外出自粛の風潮の中、円教寺と麓をつなぐ書写山ロープウェイを利用する人も少ない。いつもの夏と違い、平日で100人ほどだという。そうしたなか7月末、1000年受け継がれてきた日本伝統芸能「猿まわし」も披露され、参拝客の目を和ませた。

画像提供・日本伝統芸能猿まわし 二助企画
円教寺では新緑や紅葉の季節に公演することが多い(画像提供・日本伝統芸能猿まわし 二助企画  2019年秋)
画像提供・日本伝統芸能猿まわし 二助企画
猿の「わかば」(画像提供・日本伝統芸能猿まわし 二助企画)

 姫路市内に住む40代の男性は「運動を兼ねてよく円教寺へ来ます。摩尼殿での祈祷のもと、気持ちを集中させて、ただ悶々と過ごしている自宅とは違う空間を味わっています」とコロナ終息を願う。

摩尼殿の祈祷
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摩尼殿の祈祷
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「思いを形にしたい」中安住職は真言を4回唱えると、手の数珠を1玉ずらして108玉で1周する。それを10周繰り返す。「先の見えない状況で疫病退散への思いはもちろん、『生きとし生けるものの安穏』を祈り続けたい 」と心に誓う。

 人類は疫病との闘いの歴史を歩んだ。霊峰から捧げる祈りは、その退散の時まで続く。

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