「それでも演劇を続けるために、せーのでキッカケを作ろう。」を合言葉に、9月19日(土)と20日(日)に、大阪市北区のABCホールで、「ターニングポイントフェス~関西小劇場演劇祭~」が開催される。
現在、大打撃を受けている関西小劇場界が声を上げ、立ち上がったこのイベント。その実行委員会のひとりであり、劇団「リリパットアーミーⅡ」の座長を務める、劇作家・演出家のわかぎゑふさんが、ラジオ関西『シンコペ!~enter the エンタ~』のリモートインタビューに登場。コロナ禍での状況や、演劇界が取り組むウェブ配信への思いなどを語った。
今回のインタビューは、番組の8月ゲストで、「ターニングポイントフェス~関西小劇場演劇祭~」発起人でもあるゲキゲキ/劇団『劇団』(通称:ゲキゲキ)の主宰・古川剛充さんへのインタビューがきっかけとなっている。
わかぎさんの劇団も「実際、3月から7本ぐらい芝居(舞台)が飛んじゃったり、延期になったり、4月の公演も直前で中止になったりとかしました」と、大きな影響を受けている。しかし、「(新たに)7本仕事しているんですよね。『今しかできないからリーディングをやろう』、『オンラインで何かしよう』、『クロマキーを使った無観客配信しよう』とか、小さい現場がどんどん続いて、その中の1つが、『ターニングポイントフェス』ですね」と、わかぎさんはコロナ禍でも活発に動いている。
実は、わかぎさん自身は、舞台公演が休止を余儀なくされるなか、「60代になって、(ここで)ちょっと休めるやん!」と発想を変えて、その時間を別の目的に充てようとしたそう。「今、61(歳)で、『今後どうするか考えるのに、ちょうど良いときかな』、『なんか勉強でもするか……』みたいな思いもあったんです。私、性格がすごくのんきなので……」。
そんなときに、わかぎさんのもとに、立て続けに依頼が舞い込む。「『前に書いた本を朗読(劇)の本にしてほしい』とか、コロナの間にオンラインで1本5分くらいの(脚)本を書いてくれ』とか、規模や場所、やることが変わっただけで、忙しい状況は変わらないです」。
そのなかの1つが、5月に行われたリモート劇『12人のおかしな大阪人』だ。
この公演は、1995年、阪神・淡路大震災直後に行われていたもので、「もともとは、(東京)サンシャインボーイズがおやりになった『12人の優しい日本人』のパロディー」(わかぎ)。当時小劇場の座長や役者などが関西弁でやろうと始めた寄せ集めのような企画だったが、開演直前の1月17日に震災が発生。大阪と東京でその直後に行われた公演の際には、神戸の倒れた家から這い出してきた俳優もいたそうだ。それぞれの思いがつながり、舞台では「特別な劇団」が生まれた。また、東京では「よく来た!」と受け入れられ、チャリティーでサインを売り、それが100万円を超え、みんなで寄付したという。
「女優のキムラ緑子も出ていましたが、最初サインするのをすごい嫌がって、『もう、私、サインなんかないもーん! でけへーん!』って言っていたくせに、何百枚とサインするから、『ふっこさん(わかぎ)サインできましたー!』って、書き慣れてサインができるということもありました(笑)」と、当時のエピソードも披露。(※番組放送では時間の都合上カット)
◆公式サイト
◆クラウドファンディングサイト
わかぎゑふ プロフィール
1959年2月13日生まれ、大阪府出身
関西小劇場の劇団「リリパットアーミーⅡ」二代目座長。大阪弁の人情喜劇、明治以降の近代日本の庶民劇に定評がある。
2000年度大阪市きらめき賞受賞。2001年度大阪舞台芸術奨励賞受賞(『お祝い』の作、演出にて)。2011年度バッカーズ・ファンデーション演劇激励賞受賞(三軒茶屋婦人会「紅姉妹」脚本に対して)。
古典への造詣の深さも有名で、歌舞伎「たのきゅう」「色気噺お伊勢帰り」新作狂言「わちゃわちゃ」「おうみのおかげ」などの作・衣裳・出演なども担当。
また、大劇場から小劇場まで縦横無尽に演出できる数少ない女性演出家のひとり。コロナ自粛期から明けた2020年6月1日に歌舞伎の中村鴈治郎と「亥々会(いいかい)」を早々に立ち上げ、新作狂言「棒しばり×棒しばり」(出演=中村鴈治郎、茂山逸平)の作・演出を担当。
2014年度から京都藝術大学の非常勤講師。日本劇作家協会、日本演出者協会(現理事、関西ブロック長)日本ペンクラブに所属。
ラジオ、テレビへの出演、ドラマの脚本、エッセイ本も多数。自身のイラストの入った集英社文庫から出ている大阪シリーズが広い世代に人気。NHKで放映中の『リトル・チャロ』シリーズの原作者で、現在は英語番組『ボキャブライダー』を担当。
【活動詳細】玉造小劇店ホームページ