【インタビュー前編】千松信也さん 猟師として生きる

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 千松信也さんは1974年(昭和49年)兵庫県伊丹市出身。京都大学文学部在籍中に狩猟免許をとり、わな猟や無双網猟を学ぶ。現在は運送会社で働きながら京都の山で猟をしている。千松さんの暮らしを追った、ドキュメンタリー映画『僕は猟師になった』が元町映画館や第七藝術劇場などで公開中。猟師として生きる千松さんの生活や、動物との向き合い方についてうかがう。

◆「猟師」になったきっかけとは?

――猟師、と聞いてもイメージが浮かびにくいですね。

僕も「漁師」の方が先に思い浮かびます(笑)。山の「猟師」っていうと、ヒゲが生えていて、人ともあまり関わらないようなイメージを持たれるかもしれませんが、僕は京都で市街地と山の境目で暮らしています。皆さんがスーパーでお肉を買っている代わりに、僕は山で肉を獲ってきている、生活の一部として猟をしています。

――大学の在籍中に、猟師免許を取ったそうですね。

「俺は猟師になるぞ!」という思いでずっと猟師をやっていく、というよりは、面白そうなことの1つとして始めたのが、狩猟です。猟を始めてみたらすごく面白くて、夢中になって、ずっと続けて今に至ります。

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◆初めて捕まえた獲物

――初めて獲物を獲った時のことは覚えていますか?

よく覚えています。初めて罠をかけて2~3週目にシカがかかりました。そのときはすごく動揺して……その場でそいつの命を奪わないといけない。で、その罠にかかった雌ジカが、おびえたような目で僕を見つめてる。それはもう一生忘れません。意を決してとどめを刺して、「肉を食べるっていうのは、こういうことなんだな」と思いました。自分はこれまで、誰かに殺してもらった生き物の肉をずっと食べ続けてきたけど、今回は自分がそっち側にまわって提供できた、自分の力で肉を獲って、それを食べるってことに納得できた感じでした。

――誰かが獲ってきたお肉を食べる、ということに前から違和感を抱いていたんですか?

どれだけ「動物が好き」だと言っていても、自分が今食べている肉の元となる動物とは、何も向き合ってないなっていうのは、悶々と……中学校、高校くらいの時からあったんですね。でも今、狩猟のために山に入っていると、その瞬間だけは山の生態系の一部に混ぜてもらっているな、という感覚を手に入れられる。他の動物たちがやっている、弱肉強食の世界みたいな、食うか食われるか的な世界に入っていきたい、と思っています。

◆猟師生活20年、千松さんの「今」

――最初に獲物を獲った時と、今とでは心境に変化はありましたか?

これくらい続けていれば、もうちょっと慣れてルーティンっぽくできるのかなと思っていたんですけど、思っていた以上に慣れないというか。1シーズンに10頭くらいしか獲らないので。神戸なら六甲の方から、イノシシが街の方へ出てくるのを見る人もいると思うんですが、どんくさい奴なら3日くらいで獲れることもあるし、1シーズンの3か月4か月、一切獲れずに逃げ切られることもあって……なので思ったより慣れない。本当に殺すときはいろんな感情が今でも出てきます。

――それは、かわいそうという感情でしょうか?

映画『僕は猟師になった』にも出てきたと思うんですが、罠にかかって痛そうにしているとすごく可哀想なんですよ。なんとかしてあげないとって。まあ「なんとかする」=「殺す」なので……。そのへんの感覚がちょっと「おかしい」と言われるかもしれませんが、とどめを刺す時はなるべくスムーズに、苦しませることなく終わらせたいと思っています。

※ラジオ関西『PUSH!』2020年9月17日放送回より

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映画『僕は猟師になった』予告動画

■映画『僕は猟師になった』

語り:池松壮亮
出演:千松信也


プロデューサー:京田光広/伊藤雄介
監督:川原愛子
製作:NHKプラネット近畿

配給:リトルモア/マジックアワー

■映画『僕は猟師になった』公式サイト
https://www.magichour.co.jp/ryoushi/

■映画『僕は猟師になった』公式Twitter
https://twitter.com/ryoushimovie

■映画『僕は猟師になった』公式Instagram
https://www.instagram.com/bokuharyoushininatta/

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