宝塚市で6月、4人がボーガン(洋弓銃)で撃たれ死傷した事件などを受け、兵庫県議会は5日、ボーガンを所有する人全員に住所や氏名の届け出を義務付け、従わない場合には罰則を科す条例案を全会一致で可決、成立した。兵庫ではすでに青少年愛護条例で18歳未満への販売や貸与を禁じているが、成人を含め一律に所持を規制する条例は全国初。
兵庫では2020年、6月に宝塚市で家族ら4人がボーガンにより死傷する事件や、7月に神戸市兵庫区で妻が就寝中の夫にボーガンを発射するなどして殺害しようとした事件が相次いだ。
条例では、対象となるボーガンを「弦を引くときの重さが30ポンド(約13.6キロ)以上」と規定。12月1日に全面施行される。すでにボーガンを所有している人は12月30日までに、住所や氏名などを県に届け出るように義務付ける。条例施行前からの所有者や県外からの転入者は30日以内に、新たに購入する場合は購入から14日以内に届け出が必要。ボーガンを譲渡や廃棄、紛失した場合も14日以内の届け出がいる。県はまた、所有者や販売店に報告を求め立ち入り調査を行うことができ、これらに従わない場合、5万円以下の過料を科す。
警察庁によると、2010年1月~2020年6月に全国の警察が摘発したボーガン使用事件は32件。ボーガンは銃刀法による規制の対象外のため、今後、法規制の在り方が課題となる。
■銃器に準じる性能を持つ武器「ボーガン」一律規制に賛成
銃刀法違反事件の刑事裁判に数多く携わった藤本尚道弁護士(兵庫県弁護士会)は「近年、ボーガンの狩猟への利用が減少する中で、スポーツ(射撃)の一部門として愛好者を集めているが、その歴史はたいへん古く、第一次世界大戦時までは武器として通用していた。性能面で銃器には劣るものの、殺傷能力が十分にある点では、いまなお危険な武器の1つとみるべき。これまで未成年に対する制限はあっても一般的な規制がなされてこなかったことが不思議だった。社会生活の安全を守るためにも、ボーガンを規制することには十分、合理的な理由がある」と評価した。