――兵庫消防署では今、市民の皆さんから救急搬送にまつわるメッセージを募集しています。応援メッセ―ジや標語の募集はよくありますが、なぜ救急搬送の経験談を募集することに?
【殿村さん】実は、救急隊は、病院へ搬送した後に皆さんがどうなったか知ることがほとんどありません。「交通事故に遭ったあの子は、無事動けるようになっただろうか?」と、気にかけながら次の現場へと向かっています。そこで、過去に救急車を利用して救われた経験がある、というご本人やご家族から、様々なエピソードをお寄せいただこうと兵庫消防署で企画しました。
――すでにお寄せいただいているなかから、ひとつご紹介しましょう。
「てんかん持ちの息子がけいれんをおこしたとき、いつもの発作とは様子では違ったので慌てて119番。救急隊員のみなさんが家にきてくださりいざ出発!というときに隊員の方が救急車を降りて、救急車の後を追う予定の主人のもとへ。私は息子の付き添いで救急車の中にいたため、その時何かあったのか分かりませんでしたが、後に主人に聞いたところ『〇〇病院へ向かうので、救急車は赤信号でも走っていきますが、後を追うお父さんは信号や交通ルールをきちんと守っておちついて安全に病院まできてください』と声をかけられたそうです。その声かけがなかったら、救急車の後を信号無視して追いかけていたかもしれないと主人が申しておりました。混乱する家族への一言、さすがだと感心しました。」
(『過去に救急車を利用して救われたエピソード』より)
―――救急隊を呼ぶ方はパニックになっていますから、それをどう落ち着かせるか、というのは重要ですね。
【川村さん】救急隊では傷病者やご家族に落ち着いてもらうための“声かけ”も繰り返し訓練しています。我々の活動は病院に搬送した後のことはわからないので、普段ご本人からの声を聴くことはありません。こういうメッセージをいただけると、気持ちに寄り添う対応ができていたんだな、とモチベーションがあがりますね。
メッセージの受付は2020年10月末まで。『過去に救急車を利用して救われた経験がある』という本人や家族が対象でエピソードは、広報誌への掲載や広報動画などで紹介するという。詳しくは神戸市消防局兵庫消防署のホームページから。
お話:
神戸市消防局 予防課予防係 殿村みづきさん
兵庫消防署 救急係長 川村翔太さん