兵庫県福崎町の七種(なぐさ)山で 25日午後、不明女性の捜索中に逃走した兵庫県警の警察犬シェパード「クレバ号(オス・2歳)」が、約2日後の27日午前、逃走場所から南西に約100メートルの山中で保護された。
リードが木に絡まり動けなくなった状態のクレバを、捜査員と指導員が発見。クレバははじめ、うなり声を上げていたが、指導員の姿を見てホッとした表情になったという。ほぼ2日間飲まず食わずのクレバに、指導員は魚肉ソーセージなどを与えて落ち着かせた。けがなどはなく、元気な様子だったという。近隣で噛みつかれたといった被害は報告されていない。
兵庫県警によると、クレバは2019年7月に警察犬として登録され、2020年1月から活動しており、これまでに行方不明者を4人発見する実績も挙げている。今後、クレバを「現場復帰」させるかどうか検討中としているが、警察犬は現場で経験させながら育てるのが基本。訓練だけに終始するのは好ましくないとされる。関係者によると、クレバについては「少しずつ」を条件として現場で稼働させていたという。
警察犬は、その役割を果たせるのは10歳まで(大型犬の10歳は人間の80歳。 寿命は12歳くらい)とされる。10歳が近づくと「退役」を視野に入れる。クレバは2歳。兵庫県警に所属する11匹の中で最も若い。
警察犬は優秀な両親を交配させるなど血統が大切とされるエリート。その前提で生後6か月から1年かけて厳しい訓練を経験させて試験を突破しなくてはならない。税関に所属する麻薬探知犬とも訓練や指導のあり方は違う。たとえば訓練中に指導員を噛んでしまった犬は現場に出さず、さらに訓練を施すほど厳しい。実際に兵庫県警でもそうした例があった。
関係者よると、警察犬は指導する担当者との1対1の関係が非常に重要とされる。クレバが保護された時に安堵の表情をみせたのは指導員がいたからだという。自ら現場から去りながら、リードが木にからまって身動きが取れなくなれば、山中では大型の獣に襲われる危険もあり、不安や動揺の中で夜を過ごしたと察せられるため、見知らぬ人間が近付けば興奮して吠え立てる可能性もある。
また、警察犬としての条件に「骨格」と「性格」が挙げられるという。「骨格」はタフな体力。今回のような険しい山中での捜索活動に耐えうる要素。
「性格」は好奇心。これがないと、対象物に近づいて行けない。すなわち、人や物を探すことはできない。 警察犬も人間と同じで、それぞれに性格が違う。 クレバは特に好奇心旺盛で人懐っこく、いたずらっ子の側面もあったという。