国内外で幅広く活躍し続ける、劇作家・演出家の平田オリザさん。2019年から兵庫県豊岡市へ移住し、生活を送られています。その平田さんが但馬・豊岡の地で日々過ごしながら、感じたことを赤裸々に語るコラム、「平田オリザのまちごよみ」。第3回のテーマは、「四季を通じて街歩きを楽しめる温泉街」、城崎温泉のお話です。
城崎温泉の魅力は様々ですが、兵庫県民でも行ったことがないという方もいて驚かされます。あるいは「子どもの頃に家族と一緒に行ったけど」という方も多いようです。
そういった方にこそ、ぜひ、いまの城崎を見ていただきたいなと思います。
ご存じの方には申し訳ありませんが、あらためて、城崎温泉の魅力の基本をおさらいしてみましょう。
城崎の最大の魅力は、街歩きです。
城崎では、大きな旅館やホテルは町の端にしかなく、中心部は木造三階建ての旅館が軒を連ねます。これが最近は特に「インスタ映え」ということで若い女性に人気です。2月、3月には大学生たちの卒業旅行のメッカにもなっています。
関西の方には城崎といえば、カニを食べて温泉に入るというイメージかもしれません。もちろん、今でも11月から3月までのカニのシーズンは、どこの旅館もいっぱいです。ただ近年は、4月の桜の季節、ゴールデンウィーク、夏休みなど、通年を通じての集客が可能になってきました。コロナで激減してしまいましたが、昨年まではインバウンドも5年で40倍近くになったと聞きます。
豊岡演劇祭を9月に行うのも、数少ない「ボトム」の時期を芸術文化観光で埋めていこうという観光戦略の一環でもあるのです。