神戸を拠点に全国の客に覚せい剤や大麻を密売したとして、兵庫県警と近畿厚生局・麻薬取締部は16日までに覚せい剤取締法違反などの疑いで、住所不定、無職の男(45)を逮捕、送検した。兵庫県警は2017年に男の客とみられる1人を逮捕し、捜査を開始した。男に薬物を譲り渡したとみられる指定暴力団住吉会系組員(69)を麻薬特例法違反容疑で10月28日に逮捕するまでに、密売グループや顧客ら31人(逮捕・29人、書類送検2人)も立件、約3年にわたる捜査を終えた。
捜査関係者によると、携帯電話の通話履歴や銀行口座の記録などから、密売グループが主にインターネットの匿名掲示板で集客する手口で、延べ約600人と違法薬物を取引し、少なくとも約2億円もの違法収益があったという。このうち約400人が兵庫県在住の客だった。特徴として1回あたりの密売量を小口にしていたとみられる。
男は2020年1月、神戸市内で職務質問され、覚せい剤を隠し持っていたとして覚せい剤取締法違反容疑で逮捕。このほか大麻や規制麻薬のモルヒネも所持しており、神戸地検は男が違法薬物の密売で生計を立てていたなどとして、より罰則の重い麻薬特例法違反罪を適用、2020年9月に起訴した。逮捕容疑は、2017年7月から2020年1月、兵庫県や岡山県を中心に多数の客に覚せい剤や大麻を販売したり、札幌市の客に覚醒剤を郵送したりした疑い。容疑を否認している。
兵庫県警は5年前、尼崎市のホテルが現場となった違法薬物の大量密売事件を摘発したが、逮捕されたイラン人を含む密売グループの男女12人は、ビジネスホテルをアジト(拠点)として組織の実態を隠して売買を繰り返し、売上金は約4億円にのぼった。今回の事件は逮捕者の数でこれを大きく上回った。