午前6時半。兵庫県美方郡香美町の柴山港には、既に多くの関係者が集まり、忙しなく作業を行っていた。山陰海岸ジオパークエリア内でもあり、風光明媚な地にある漁港には、四季折々の新鮮な魚介類が水揚げされるが、11月6日に解禁された松葉ガニの水揚げ量は、山陰屈指を誇る。
この日も、新鮮で立派なカニが状態ごとに仕分けされ、青いビニールシートの上にズラリと並べられた。
カンカンカン! 鐘の音を合図に、いよいよ競りがスタート。緊張の瞬間だ。
競り人のまわりには多くの仲買人たちが集まり、すばやく値段をつけていく。1番高い値段を付けた人が品物を買うことができるのだが、そのあいだ、わずか数秒。ピリッとした空気の中、男たちの声が響きあう。
ここ柴山では、小さな黒板に数字を書いて入札する制度で競りを行う。競り人は神経を集中させ、一番高値の数字を瞬時に見分けなければならない。どれぐらいの値段をつけようか……仲買人の腕も試される。一朝一夕ではできない“神(香美)業”だ。
但馬漁業協同組合、柴山支所長の和田耕治さんによると、柴山港ではマスコミ向けに100通り以上のカニのランク分けをしているが、実際は300近くあるのだそう。これは、日本一、いや、世界一厳しい選別と言っても過言ではない。
大きさ・身のつまり・指落ち、姿の傷がないか……など、1枚1枚点検してわけていく。この骨の折れる作業も、至難の業である。慣れた人でも「これはどうだろう……」と悩むことがあるという。夜、船が帰港すれば、カニをより分ける作業は寝る間もなく続く。