「伝説の不老長寿の実」タチバナの果実 例年の10倍に 神戸・湊川神社

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 神戸市中央区の湊川神社で「不老不死の実」とされるタチバナ(橘)の果実が、例年の10倍ほど実り、このほど、訪れた参拝者に授与された。

タチバナの果実を受け取る参拝者
タチバナの果実を受け取る参拝者

 同神社には推定樹齢150年、国内最古とされる高さ14メートルのオリーブの樹がある。今年は、この樹から初めて果実が収穫され、手搾でオイルが抽出されたばかり。

 タチバナの樹は、湊川神社の御祭神、楠木正成公が敏達天皇を始祖とする「橘氏」の流れに連なることから本殿西側に植えられている。

 12月1日、タチバナの果実は、神職によって一つひとつ丁寧に摘み取られ、神前に供えられた。その後、紅白の水引とともに配られ、参拝者は愛おしむように受け取っていた。

タチバナの果実を受け取る参拝者の長蛇の列
タチバナの果実を受け取る参拝者の長蛇の列

 湊川神社広報室長の鈴木智子さんによると、「毎年20個程度しか結実しないが、今年は1本に220個の果実がたわわに実り、温州ミカンのように甘い。コロナ禍において不思議なことと驚いたが、ぜひ皆さまにお分けして、心身ともに元気になってもらいたいと考えた」と語った。

『古事記』『日本書紀』に、不老長寿の実「非時香果(ときじくのかぐのこのみ)」と記されているのが、実はタチバナの実だという。タチバナは日本固有種の柑橘類で、現在の食用柑橘類の原種のひとつといわれる。万葉集にも多数詠まれ、平安宮内裏の紫宸殿の前庭にも植えられた「右近の橘・左近の桜」という言葉はなじみ深い。

 そして、タチバナの樹は1年を通じて青々とし、黄金色の実をたくさんつけることから縁起のよい「生命力の宿る樹」とされている。

 楠木正成公は、並外れた武勇だけではなく、わずかな物資・兵力であったものの稀有な智略をもって押し寄せる敵方の大軍を退け、最期まで忠誠を貫き通した、「不屈の人物」として尊敬され続けている。

 令和2年の日本において、人類史上初の“コロナ禍”に暗くなりがちであった世間を励ますかのように、生命力の象徴の実をつけたこのタチバナの樹。我々が直面している未曾有の大危機に「負けてはいかん。皆で頑張り通しなさい」と、黄金色に輝く果実を通して鼓舞してくれたようにも思える。

(文:黒川良彦)

湊川神社の絵馬
湊川神社の絵馬

『参考資料』(湊川神社広報室提供)
                                 
■「不老長寿の実・非時香果(ときじくのかぐのこのみ)」古事記
「垂仁天皇が田道間守(タジマモリ)を、不老不死の力を持つと言われる『非時香果』を探しに常世の国へ遣わしました。艱難辛苦のうえ十年の歳月をかけてやっと『非時香果』を見つけた田道間守は大喜びで持ち帰りましたが、その1年ほど前にすでに天皇はこの世を去っておられました。田道間守は悲しみのあまり亡くなってしまいました」。この『非時香果』はタチバナのことで、田道間守はお菓子の神様として神社におまつりされています。

■「楠木正成公と橘」
当社のご祭神楠木正成公は、敏達天皇を始祖とする「橘氏」の流れ、橘諸兄の末裔を称しておられました。湊川神社でも、菊水紋の他に橘紋を使用することもあり、本殿西側に橘樹を大切に育てています。
「橘は実さへ花さへその葉さへ 枝に霜降れどいや常葉の木」(聖武天皇御製歌)
これを神楽歌とした舞「橘の舞」は湊川神社の巫女舞として、楠公祭など大祭で神前に奉奏されています。

■「右近の橘・左近の桜」―日本の文化と橘
平安宮内裏の紫宸殿の前庭、西方の右近衛府、東方の左近衛府にそれぞれ植えられていました。雛人形のお飾りでもなじみ深いものです。文化勲章のデザインに使用され、五百円玉にも描かれており、古くから日本の文化に深く関わる由緒ある樹であることがわかります。

湊川神社(楠公さん)
http://www.minatogawajinja.or.jp/

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