戦後の日本美術を語る上で欠かせない「具体」=具体美術協会の作品を集めた「開館50年 今こそGUTAI 県美(ケンビ)の具体コレクション」が、兵庫県立美術館で開催中。2021年2月7日(日)まで。【※イベントは終了しました】
具体美術協会は、1954年という戦後の混乱から脱しつつあった時代に「人の真似をするな」を合言葉に「自由な創造の場」として芦屋市で発足した。1972年に解散するまで18年という長い期間にわたり活動し、海外でも高い評価を受けている。
兵庫県立美術館は、前身の「兵庫県立近代美術館」が開館した1970年から作品を収集している。開館した当初はグループもまだ存続していた時期に当たる。2004年の「具体」回顧展以来となった今回について、蓑豊館長は「また具体か、と言われるかもしれないが、当館のコレクションは世界一。これまでとは違った視点を楽しんでほしい」と話す。
具体というと、吉原治良(よしはら・じろう)、元永定正、白髪一雄といった作家がまず思い浮かぶが、男性女性問わず活躍していた。県美の所蔵品にも女性の作品が多く、今回の特別展は女性作家に注目している。
無数の円や線が並ぶ田中敦子の作品。点滅する電球がコードとつながれた「電気服」という作品と並行して描かれたとされ、円は最初電球だったと思われる。円はクレヨンで塗りこめられていたりインクで軽やかに色が付けられていたり様々で、田中は画材を使って紙と向き合ううちに、円を描くこと自体に引き込まれていったのではないかという。このほか、山崎つる子や白髪富士子らの作品には新しい素材への鋭い感覚が見られ、独自のアプローチで壮大な世界観を表現している。
また「県美の具体」を語る上で忘れてはならないのが、西宮の美術コレクター・山村德太郎氏だ。
山村氏は具体の作品をヨーロッパから買い戻すなど、当時の県立近代美術館と競うように作品を集めていた。山村氏の没後、そのコレクションは近代美術館に収蔵されることになり、一気に収蔵品が増えた。具体関連の作品が増えたことで、近代美術館の収集方針に「現代美術」加わり、その後も作品の収集が続いた。2002年に阪神・淡路大震災からの「文化の復興」のシンボルとして、現在の場所で新たなスタートを切った「兵庫県立美術館」が世界に誇る「最も充実したコレクション」のひとつと言われるようになった。
今回の特別展は県立美術館の所蔵品でほぼ構成され、グループが活動した60年前の「現代」を感じることができる。鈴木慈子学芸員は「具体は『新しい』ことが特徴で、枠にとらわれない活動をした。こんな人もいてこんな表現もあるんだという多角的な理解につながれば」と話す。
◇兵庫県立美術館 特別展「開館50周年 今こそGUTAI 県美(ケンビ)の具体コレクション」
会期 2020年12月5日(土)~2021年2月7日(日)
休館日 月曜、年末年始(12月28日~1月4日)
※ただし、1月11日(月・祝)は開館し、翌12日(火)は休館。
会場 兵庫県立美術館 企画展示室
※予約優先制(兵庫県立美術館のWebサイトから予約 電話予約は078-262-1011)
兵庫県立美術館 ホームページ
https://www.artm.pref.hyogo.jp/