映画評論家・増井孝子が注目映画を紹介する「おたかのシネマDEトーク」。今回ご紹介するのは『サイレント・トーキョー』。
ジョン・レノンが亡くなってから、早いもので、もう40年が経つ。命日と、そしてクリスマスも近いこの時期によく耳にするのが、彼とオノ・ヨーコが1971年に発表した「Happy Xmas(War Is Over)」。そしてこの曲にインスパイアされて生まれたのが、秦建日子の小説「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」(河出文庫刊)。
秦は脚本家として活躍し、2004年に「推理小説」で作家デビュー。この小説は“刑事 雪平夏見”シリーズとなり、「アンフェア」のタイトルで篠原涼子が主演してドラマや映画化され、人気を得ている。
一方、岡田准一を主演に迎えてTVドラマ「SP 警視庁警備部警護課第四係」で高視聴率を取り、映画「SP 野望篇 / 革命篇」で映画監督デビューしたのが波多野貴文。
そんな二人がタッグを組んだのが、この映画『サイレント・トーキョー』だ。
クリスマスイブ。TV局に“恵比寿のショッピングモールに爆弾を仕掛けた”という1本の電話がかかってくる。
「どうせガセネタだろう」と思いながらも取材にやって来た契約社員の来栖(井之脇海)と先輩の高沢(金井勇太)は、そこにいた主婦のアイコ(石田ゆり子)とともに、小さな爆発に巻き込まれる。そしてなぜか、来栖はアイコと一緒に犯人に操られ、犯行声明と要求をTVで読み上げることになる。“首相と生放送で対談させろ”という犯人の要求を、磯山総理大臣(鶴見慎吾)が断固としてはねつけたことから、次の場所を午後6時に爆破するとの予告。そこは、あろうことかクリスマスの人出でにぎわう渋谷のハチ公前だった。
不審な動きをするIT起業家の須永(中村倫也)、彼を追う刑事の世田(西島秀俊)と泉(勝地涼)、須永に好意を寄せている綾乃(加弥乃)と、その友人の真奈美(広瀬アリス)……、彼らの目の前で、渋谷の街は爆破され、多くの犠牲者が出る。