漢字1文字の一般公募で1年の世相を表す「今年の漢字」、 新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るった2020年は 「密」が第1位に選ばれた。これほどまでに「密」や「距離感」に敏感になった年はなかった。
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京都・蓮華王院 三十三間堂。
「ここ10年近く、毎月仏さまに会いに来るけど、空気の入れ替えでお堂の格子が開け放たれているのを見たのは初めてです。よう気を遣ってくれはります」三十三間堂近く、京都の七条界隈に住む60代の男性が驚いた表情を見せた。
新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、初めて発令された緊急事態宣言が解除され、少しずつ世間が動き始めた2020年6月、拝観が再開された。
堂内を整然と並ぶ埋め尽くす金色の 1001体の「木造千手観音立像」 とは対照的に、参拝客に、いつものインバウンド(訪日外国人観光客)の姿はなく、 ごく数人が互いに距離を取って、右手に並ぶ観音像を眺め、北から南へ通じる細長い通路を譲り合いながら進んでいたのが印象的だ。
1001体の観音立像が2018年に国宝に指定されて2年を迎えた。数え切れない無限の世界を表現、 それぞれの仏に名前がある。よく見ると顔はすべて異なり、もう一度会いたい、亡くなった人の顔が見つかるといわれる。
神戸市東灘区の30代の女性は「仏さまは一見、密集しているように見えますが、私たちのコロナ収束への思いが達成されて通常の生活が戻るまで、ひとり孤独と思わずに、皆が同じ方向を向いて、一緒に支え合ってゆきましょう、というメッセージを発していると思います」と話した。
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東京・上野公園。
2020年12月中旬、東日本大震災から間もなく10年。津波で甚大な被害を受けた宮城県南三陸町など三陸海岸を支援する活動を続ける「学生団体ToKu」代表・森川颯太さん(20・ 大学2年 東京都内在住)がコロナ禍での支援活動で「埋められない距離」をどうするか自問自答していた。(※記事中写真・関係者提供)