政府、与党内で2月7日が期限の新型コロナウイルス緊急事態宣言の延長は避けられず、2月末までの延長との見方が強まっている。コロナ感染拡大防止対策で、政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」が全国一斉に一時停止、さらに2021年早々、首都圏に続き関西3府県に緊急事態宣言が再発令され、飲食業のみならず観光地へ大きな打撃を与えている。
神戸の有馬温泉街にある老舗旅館「陶泉 御所坊」では2020年12月、年末年始の予約がほぼ満室で、予約客のために用意する正月料理の食材をすでに仕入れていた。しかし「Go To トラベル」全国一斉停止の影響で、キャンセルは約200人分、売り上げは半減したという。有馬温泉観光協会・会長で「陶泉 御所坊」の代表取締役、金井啓修さんは「2月、3月は相当厳しい状況なのではないか」と話す。GoToキャンペーンのメリットは、観光客も、観光客を受け入れる側も十分感じたはずだが、受け入れ側はこのままではいけないという思いもある。
金井さんはまた「GoToの全国一斉停止で激震が走った矢先、緊急事態宣言の再発令、解除されたとしても一気に旅行ムードにはならないような気がするので、どうなるのか今後の見通しが難しい」と話す。 そして「みなさん海外行きたいし、海外のお客様=インバウンド(訪日外国人観光客)も日本に行きたいと思ってます。それは同じだと思うんですよ。有馬温泉自体はインバウンドの方々だけ大事にしていたのではなく、日本人のお客様にも喜んでいただく、海外の方も、地元の方々、関西の方々が行くから、それが魅力になってると思うんですよ。そういう温泉地をつくっていかなければなりません」と気を引き締める。
さらに続ける。「2020年、コロナ禍で気づかされたのは、災害やこうした疫病は思わぬところからやってくるんだな、それと同時に人間の英知って、知れてるのかな、限界があるのかな、とも思いましたね。自然の恐ろしさや、災害のこと、いつも身近なものとして意識しないといけない。2020年、振り返れば3月中旬にお客様の流れに異変を感じました。多くの学生さんが卒業旅行で来られていた時期、京都の大学生の間でクラスターが発生した頃です。これがひとつの節目、ピタッと止まりました。それから緊急事態宣言が発令されて5月に解除され、その時は大きな動きは感じられませんでしたが、7月末の4連休に、予約が増えてきました。これと相まってGoToキャンペーンが始まります。夏休みは緩やかにお客様が増えてきた、9月はもっと増えてきた、10月11月は急激に。でも12月になり感染者数が拡大して予約の数が少しずつ下がってきた、という流れです」
アクセルとブレーキのはざまで『GoToキャンペーン』が始まった。しかし今の一斉停止、いつ解除されるかは読めない。金井さんは「GoToキャンペーン 、確かにお得です。お得だからたくさんの方々に来てもらえるメリットは十分あります。できることなら政府にはもっと継続をお願いしたい。じゃあ、お得でなくなったら(GoToキャンペーンが終了となれば)来ていただけるのかという一抹の不安はありますよ。だから今回の年末年始の一時停止や緊急事態宣言の再発令による影響は大きい。私たちに課されるのは、仮にGoToキャンペーン がなくなっても来ていただける温泉地を目指さないといけないですね」と話す。