東京五輪組織委・森会長発言に思う《1》「周囲の忖度(そんたく)が哀れ」「日本の男性も、もっと怒るべき!」~NPO法人「さんぴぃす」理事長・河口紅さん

LINEで送る

この記事の写真を見る(5枚)

「女性がたくさん入っている理事会は(会議に)時間がかかる」。2月3日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)によるJOC(日本オリンピック委員会)臨時評議員会での発言の余波は大きい。

東京オリ・パラ 予定通りの開催ならば、開幕まで165日(2021年2月8日現在)
東京オリ・パラ 予定通りの開催ならば、開幕まで165日(2021年2月8日現在)

 スポーツ庁がまとめた「ガバナンスコード」に沿い、JOCが女性理事の割合を40%以上にしようとしていることに関連しての発言だ。イギリスでは「#Moriresign(『森は辞任しろ』)」とのハッシュタグが拡散し、フランスでは「高速道路を時速320キロのスピード違反で走り、速度取締機に引っかかった」とフリーペーパーが報じた。ただでさえ、新型コロナウイルスの流行が収まらない中での東京オリ・パラ開催に暗雲が立ち込める中、「性差別的」との批判もさることながら、世界中で「人として、どうなのか?」との声が挙がっている。

「多様性と調和」は東京オリ・パラの核となるビジョンの一つ。「ジェンダー(社会的意味合いから見た、男女の性区別)の平等」は基本的原則の一つ。公式ウェブサイトにも記されている。

「多様性と調和」は核となるビジョン、「ジェンダー(社会的意味合いから見た、男女の性区別)の平等」は基本的原則 〈※ 東京オリ・パラ公式サイトより〉 

 兵庫県立大学非常勤講師として「キャリアデザイン」を通じ、女性の起業支援なども行っている芦屋市のNPO法人「さんぴぃす」理事長、河口紅(かわぐち・くれない)さんはこう見る。

河口 紅さん 女性の起業支援なども行う

・・・・・・・・・

 日本の男性は、この件に関してもっと怒るべきです。森会長の発言は、世界中から日本の男性は差別意識を持っていると思われてしまう危険性があります。私の経験上、女性だけのミーティングに時間がかかったことはありません。「女は話が長い」も失礼ですが「男性、女性、そして両性」と言った表現は許されるものではありません。この人(森会長)は基本的に人への思いやりや人に寄り添うという姿勢に欠けています。

河口 紅さん「経験上、女性だけのミーティングに時間がかかったことはない」〈※ 画像は女性のみのセミナー〉

 私は最初、森会長が会長を辞めたいがゆえにあえて失言したのでは?と思っていました。元首相とはいえ、2019年に日本列島を大いに沸かせたラグビーワールドカップの日本招致の立役者とはいえ、コロナ禍での東京オリ・パラの開催をどうする?といった重要な局面は相当な重圧、こんな発言したら絶対問題になるということを、あれだけ堂々と言ってしまえば(会長の)職を辞することができると。ところが辞任はしないという発言に、心底驚きました。「本心から言ってたんだ……」と。

・・・・・・・・・

 首相時代を含む国会議員時代、森会長は「日本は天皇を中心とする神の国(2000年5月)」「無党派(選挙で投票先を決めていない人)は寝ていてくれればいい(2000年6月)」「子どもを一人もつくらない女性を税金で面倒をみるのはおかしい(2003年6月)」など失言を連発して大きな批判を浴びていたが、河口さんは今回は質的にも違うと指摘する。

・・・・・・・・・

 戦後の日本、高度経済成長著しい時代であっても確かに女性に対する扱いはこんな感じでした。私が大学受験の頃(1980年代)でさえ「女が4年制大学へ行ってどうする?」などと言われていましたから。森会長は、きっとその感覚のまま、今の時代に一つの組織でトップを務めていること自体がおかしいのです。

日本オリンピックミュージアム(東京都新宿区) JOCが22億円を投じた〈※2019年12月20日撮影〉

 長年スポーツ界に貢献してきたために「余人をもって代え難い」とされる森会長に忖度(そんたく)しなければ生きていけない周囲の人たち。哀れです。会議の長さを引き合いに出された日本ラグビー協会の女性理事へのコメント(「女性は競争意識が強く、誰か一人が手をあげて言われると、自分も言わないといけないと思う」という趣旨)も失礼ですが、「7人ぐらいかな。みんなわきまえておられる」と言われた組織委の女性たちに対しても失礼です。今でも男性主導社会の「密ある社会」が政治の世界で続いているということなんでしょう(※2020年12月29日「ラジトピ」2020年『密』に思う《2》~Withコロナ時代に『密』なし=男女平等にクリアな社会になるのか?も参照ください)。

 IOC(国際オリンピック委員会)にとって東京オリ・パラは、史上最も男女平等に配慮した大会だったはず。逆に森会長、よくぞ本心を言ってくれたとも言えます。このような差別意識が日本ではまだ、あからさまに残っているということを世界中に発したことで、これから日本も変わるかも、と皮肉にも少し期待しています。

・・・・・・・

 森会長は発言の翌日(2月4日)、「五輪の精神に反する不適切な発言だった。深く反省をして、発言を撤回したい」と釈明した。辞任は否定した。これを受けIOCは、「問題が終わったと考えている」との声明を出した。コロナ禍での開催の可否が問われる大変デリケートな時期、森会長は「老害が粗大ごみに。(私が)邪魔なら掃いてもらえば」とも。反省はどこにあるのか。予定通りの開催ならば、東京オリンピック・パラリンピックまで160日あまり。この痛手、あまりにも大きい。

河口 紅さん

◇河口 紅(かわぐち・くれない)
NPO法人「さんぴぃす」(芦屋市)理事長/株式会社教育情報マネジメント執行役員/兵庫県立大学非常勤講師「キャリアデザイン」
関西大学卒業後、(株)リクルートに入社。退職後、2003年にNPO法人さんぴぃすを設立。現在は「日本の子どもたちに世界一の教育環境を!」をテーマに、2つの教育系NPO法人を経営。またFacebook社#起業女子プロジェクト兵庫県担当トレーナーとして各地でWEBマーケティングセミナーなどを開催、女性起業家のネットワークづくりも手掛ける。

LINEで送る

関連記事