加古川市で2016年、市立中2年の女子生徒(当時14)がいじめを苦に自殺した問題で、学校が適切な対応を怠ったとして、両親が市に約7700万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、神戸地裁姫路支部で開かれ、市側は「法的責任は否定せざるを得ない」として請求棄却を求め、争う姿勢を示した。
この問題をめぐっては生徒の生前、部活動でのいじめの内容を記したメモを顧問らが破棄したことが判明。自殺の経緯を調べた第三者委員会に対し顧問らは「紛失した」と答え、破棄を隠ぺいした疑いが持たれている。
訴状によると、生徒は小学5年ごろから、本人が嫌がるあだ名が付けられ、中学でもクラスや部活で無視されたり、「うざい」と悪口を言われたりするなどした。
2015年11月、生徒は両親に「部活をやめたい」と訴え、両親は顧問に相談。顧問と副顧問は部員らにいじめの内容をメモに書かせたが、部員同士のトラブルと判断しシュレッダーで破棄した。生徒は2016年6月のアンケートでいじめをうかがわせる回答もしたが、いじめは続き、9月に自殺した。
10日の口頭弁論で女子生徒の両親が意見陳述し「私たちが許せないのは、勇気を持って教員にいじめの事実を書いたメモを渡しているのに、黙殺されたこと、この経緯について道理がなく非常識な回答をしてくる市教委の姿勢だ。このままでは不幸が繰り返される」などと怒りをあらわにした。
両親は、学校側がメモの破棄やアンケートの存在を秘匿するなど不誠実な対応を繰り返し、「娘の尊厳がないがしろにされた」と訴えている。
遺族側の代理人、渡部吉泰弁護士はこれまでに関係者への聞き取りを進めた。そのうえで「いじめ防止対策推進法に定められた、いじめに対する早期段階での発見義務を怠った」と指摘。「当時、担任から校長へ、いじめの報告があったのに、そこから教育委員会への報告はなかった。裁判では学校の組織的な問題も問いただしていきたい」と話した。