阪神間モダニズム建築のひとつとして名高く、国の重要文化財にも指定されている兵庫県芦屋市の「ヨドコウ迎賓館」(旧山邑家住宅)で、13日から雛人形展が開催されている。フランク・ロイド・ライトの名建築と、100年以上前の京都の名匠の技を併せて堪能できるぜいたくな催しだ。
「ヨドコウ迎賓館」は、1918年、アメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトが、“櫻正宗”の銘柄で知られる灘の酒造家、八代目山邑太左衛門の別邸として設計した4階建て建築。ライトの帰国後は弟子である遠藤新と南信が引き継ぎ、1924年に竣工。小高い丘の上、緩やかに傾斜する山肌に沿って階段状に建つのが特徴で、1947年に淀川製鋼所が所有者となり、1974年には国の重要文化財に指定された。
そんな名建築を舞台に和の匠の技を味わえると人気なのが、毎年恒例の雛人形展だ。展示されている人形は、八代目山邑太左衛門氏が長女の誕生を祝って京都の老舗「丸平大木人形店」に依頼し、明治年間の1900年から1901年にかけて納められた逸品。長女からその娘に受け継がれ、縁あって淀川製鋼所が所有するところとなり旧山邑家住宅に里帰り。1992年から雛祭りの時期に一般公開されている。
展示は雛人形、花嫁人形、花観人形の3つの人形群から成る。雛人形は7体の人形を中心に段飾り一式が揃う。当時、当代随一と言われた頭師(かしらし)が顔を手がけた内裏雛は、高さが約45センチメートルと雛人形としては大きく、豪華さを際立たせている。
絢爛な装束は、当時の最高の技と素材で京都の職人が作り上げたもので、花嫁人形と花観人形も含め、人の手によって一枚一枚着付けられた。髪も、髪結師が櫛で丁寧に梳(す)いて整えたという。表情が豊かなのは、「かいな折り」(手・腕に振りをつけること)によって指先にまで繊細な動きが及んでいるからだ。