尼崎市は、市内にある特定抗争指定暴力団・六代目山口組系幹部の住宅について、諸経費を含み1900万円で買収する。市内では六代目山口組と、対立する神戸山口組の抗争とみられる事件が相次いだ。
買い上げるのは尼崎市南武庫之荘5丁目の住宅。阪急電鉄・武庫之荘駅の南西約700メートルの住宅街にある。この住宅で、2020年11月に発砲事件が起きている。事務所以外の暴力団関連施設を自治体が直接買収するのは全国で初めて。
過去に暴力団事務所として使用されていたが、現在は事務所として認定されていない。このため暴力団対策法の規制の対象外であることから、市が住宅の所有者と直接交渉して購入を決めた。
尼崎市によると、不動産業界にも暴力団排除の機運が高まっているが、その反面、暴力団関係者同士で私的に土地が取引される恐れがあるという。このため、市が一度買い取って売却することで、民間に流通させることとした。
2021年1月、兵庫県警からこの住宅の売却意向について情報提供があったという。尼崎市は補正予算に買収費用を計上し、市議会で承認されれば4月1日に所有者と売買契約を締結する。市はその後、転売先を探す。
尼崎市内では2020年11月3日、神戸山口組系組長ら2人が拳銃で撃たれて重傷となる事件が発生した。買い上げの対象とした住宅では11月18日、玄関のドアや外壁に3か所の弾痕が確認された。捜査関係者によると、銃撃事件の報復となった可能性が高いという。
同様の取り組みでは、北九州市(福岡県)で、特定危険指定暴力団・工藤会の本部事務所の跡地を、市の仲介で民間業者が購入した例がある。